震災復興より「集団移住すべき」論に感じる違和感 若い世代にも「今の場所で守りたいものがある」人もいる

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工場の神棚には力強い「復興」の文字が。その下には火鉢があり、いつか炭やきを再開するときまで火種をしっかり守っている。大野さんの会社「Notohahaso」公式サイトでは窯の修繕などのため寄付を募っている(写真:筆者撮影)

能登には課題もあるけれど、希望もある

実は、能登は「世界農業遺産」に日本で最初に選ばれた場所(現在、日本で15地域)。2008年には、国連が主催しドイツで開催された「生物多様性条約第9回締約国会議」で、当時の知事が里山保全の取り組みについて講演も行っています。能登の自然とそれにまつわる産業は世界に認められているもので、さらに輪島塗など日本が誇る文化もあります。

その一方で、人口減少により近い将来、消滅するかもしれない「消滅可能性自治体」に能登の自治体はほとんど入っています。そしてその自治体の中でも珠洲市は人口がかなり少ない市に該当します。

とはいえ、人口減少が進む日本では「消滅可能性自治体」に該当する自治体は全国の4割もあるのです。ただ、過去には、自治体の支援努力などで「消滅可能性自治体」から脱した地域もあります。

「消滅可能性自治体」から本当に消滅するのか、それともそこから脱するのか。「限界」なのか、「可能性」を活かせてないだけなのか。そのカギとなるのは、その自治体に、その土地で生きる価値を知り、未来を作ろうと本気で取り組む人がどれだけいるかなのでしょう。今回取材した大野長一郎さんは「炭やきビレッジ構想」の実現も目指しています。炭やき業は全国的に減りすぎて逆に需要に追いついてない部分もあるとして、採算計画が立つ7世帯まで、近隣で炭やき農家を広げて連携するプロジェクトです。大野さんは、炭やき復活のさらにその先を見つめているのです。

現在、能登の復旧・復興には多くの壁があり、人手不足・業者不足も深刻です。ただ、今回の取材では、移住で能登に来たのに震災後も能登にとどまる人にも、能登の未来への構想を語る人にも、何人も会いました。私の友人のひとりは、震災後に決意し、能登へ移住(Uターン)する予定を立てています。能登には課題もあるけど、希望もある。そんなことを実感した今回の能登取材でした。

ハラユキ イラストレーター、コミックエッセイスト

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はらゆき / Harayuki

雑誌、書籍、広告、Webなどの媒体で執筆しつつ、コミックエッセイの著書も出版。2017年から約2年間バルセロナに住んだことをきっかけに、海外取材もスタートさせる。著書に『女子が踊れば!』 (幻冬舎)、『王子と赤ちゃん』(講談社)、『オラ!スペイン旅ごはん』(イースト・プレス)、この連載を書籍化した『ほしいのはつかれない家族』(講談社)など。この連載のオンライン・コミュニティ「バル・ハラユキ」も主宰し「つかれない家族をつくる方法」を日々探求、発信中。ハラユキさんのHPはこちら

 

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