2024年9月2日付の「プーチンと国民の離反を狙うウクライナ軍の戦略」の中で、ウクライナ軍が2024年8月のクルスク越境作戦をもって開始した第2次反攻作戦の一環として、モスクワなど大都市へ攻撃を加える可能性があると指摘したが、まさにその通りの展開となった。
ゼレンスキー政権としては、モスクワなど、これまで戦争の悲惨さを実際に味わってこなかった大都市住民に、戦争で攻撃対象になるという恐怖感を味わわせることで、プーチン政権に対し、侵攻をやめるよう声を上げさせることが狙いだ。ゼレンスキー氏が宣言した「戦争をロシア国内に持ち込む」戦略の一環だ。
これより先、越境攻撃という一種の奇襲攻撃を成功させたウクライナ軍は、クルスクの一部地域占領を続けている。この越境攻撃にはいくつかの狙いがある。
そのうちの最も主要な狙いは、長期的にロシア領内を一部占領し続けることで、プーチン政権に屈辱を与え、「力の立場」で侵略中止と完全撤退を迫るための交渉材料にすることだ。
クルクス奪還を始めたロシアだが…
クルスク占領とモスクワなど大都市攻撃という双方の継続は今後、プーチン大統領に侵攻停止とウクライナからの撤退を迫るうえでの圧力装置の両輪となる。
クルスク州の一部占領を続けているウクライナ軍に対し、ロシア軍は2024年9月11日、ようやく本格的反攻作戦を開始した。越境から1カ月以上経ってからの反撃開始だった。
ロシア軍はウクライナ東部・南部戦線に張り付けていた部隊から計3万人から4万5000人の兵員をかき集めて転戦させて作戦を開始、これまでに「10の集落を奪還した」と主張した。
反撃開始までの間、プーチン氏はとくに重要ではない外遊をキャンセルせずに次々行うなど、クルスクへの越境攻撃についてさほど重大事と捉えていないかのような余裕の姿勢を国内外で見せていた。しかし、これはロシア軍のクルスクでの反攻態勢が整うまでの時間稼ぎだったようだ。
1カ月以上という準備期間については、ロシア軍の投入兵力の規模などを考えれば、ロジスティックス上、これほど時間がかかったのは当然とみている。
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