ドイツが転向を迫られた「移民難民問題」の深刻 テロ続発で高まる懸念、右派躍進に募る危機感
9月5日にはミュンヘンで、ナチ・ドイツに関する歴史資料館と、シナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)に銃弾が撃ち込まれた。警察官との銃撃戦の末、ボスニア出身のオーストリア人の男(18歳)が射殺された。
この男はイスラム原理主義思想を持っており、1972年にミュンヘンオリンピック事件(パレスチナ武装組織によってイスラエルのオリンピック選手、コーチ11人が人質に取られ、殺害された)があった9月5日を、犯行日にしたと言う。
ドイツの近年のテロでは、2016年12月19日、ベルリンのクリスマス市にトラックが突っ込み、12人が死亡、53人が重軽傷を負う事件が最も大規模なものだった。
容疑者はチュニジア人の男(24歳)で、12月23日にイタリア・ミラノで警察官に射殺された。ISの思想に共鳴していた。容疑者は2016年6月にドイツで難民申請をしたが却下され、チュニジアへの送還対象となっていたが、書類の不備などでドイツ国内にとどまっていた。
出入国管理政策に批判の矛先
ドイツの公共放送ARD(電子版)によると、ドイツでは、2006年から今年5月のマンハイムの事件までに、未遂の爆弾テロも含め12件のイスラム原理主義を背景にしたテロが起きている。
これらの事件の容疑者の多くは、出入国管理体制がしっかり機能していれば、ドイツ国内には在留しておらず、従って事件も起こらなかった。政府の出入国管理政策にも批判の矛先が向かっている。
日本では散発的に小さく報じられるだけだが、当然のことながら、ドイツにとってはこれらの出来事は大事件であり、事件があるたびに連日トップニュースで報じられる。
マンハイムの事件の時は、地元で行われた死亡した警察官の慰霊祭に、フランクヴァルター・シュタインマイヤー大統領も出席した。
ショルツ首相は事件を受けた議会演説で、アフガニスタン人であっても犯罪者は送還する、と厳しい姿勢を打ち出した。タリバン政権発足後、帰国すれば迫害の恐れがあるとして、ドイツはアフガン人を送還の対象とはしてこなかった。ゾーリンゲンの事件の際は、ショルツ首相が地元の慰霊祭に出席した。
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