ドイツが転向を迫られた「移民難民問題」の深刻 テロ続発で高まる懸念、右派躍進に募る危機感

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戦後ドイツ政治を担ってきた既成政党や知識人にとって、右派政党は存在を許すことができない政治勢力だった。しかし、AfDが継続的な支持を得ていることは否定しようがなくなっている。

ARDは世論調査に基づき、AfDは2013年の発足当初、既成政党に飽き足らない有権者が支持する「抵抗政党」だったが、今では具体的な問題解決への期待から支持する「課題解決政党」に変化した、との分析を報じた。

既成政党はAfDの強硬な移民・難民政策を取り込まなければ、その勢力拡張を押しとどめることはできない。

段階的に厳格化してきた現ショルツ政権

ドイツは1950年代からガストアルバイターと呼ばれる移民労働者を1000万人以上受け入れ、冷戦崩壊後の混乱から東欧諸国や旧ソ連から100万人以上、2015年の難民危機でも100万人以上の難民が流入した。

すでに人口の4人に1人が移民系となっており、さらに2023年には「第3波」ともいえる35万人の難民流入があり、主に収容施設に責任を持つ地方自治体から受け入れは限界との声が上がっていた。

外国人による犯罪が人口比で高率であることや、増加傾向にあることは主要紙でも報じられるようになっている。2023年1月25日、刑務所から出所したばかりのパレスチナ出身の男(33歳)が、電車内で10代の若者2人を刺殺した事件は衝撃を与えた。

2021年12月に発足したショルツ政権は、外国人問題に手をこまねいていたわけではない。

2023年8月、「安全な出身国」にジョージア、モルドバを追加することを打ち出した。「安全な出身国」から来た越境者は、本人が難民該当性を証明できない限り、原則的に送還される。EU加盟国、アルバニアなどのバルカン諸国、ガーナなどのアフリカ諸国が該当する。

10月からは、自由な人的往来を保証するEU(シェンゲン条約)の理念に反するが、それまでのオーストリアに加え、ポーランド、チェコ、スイスの国境で検問を開始した。

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