発達障害の子どもとの対話で大人が陥る落とし穴 そのコミュニケーションは大人が楽になるだけでは?

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距離感の近い人もいれば遠い人もいるし、積極的にことばでのやりとりを好む人もいればその逆も。この問題は万人共通で、発達障害だから特別ということではありません。

コミュニケーションは教えるもの?

以前、とある支援学校での自閉症スペクトラム障害への生徒に対する取り組みについて、お話をうかがう機会がありました。生徒たちの将来的な校外での実習に備えて、仕事で実施した内容を上司に報告するスキルを身につけるために、作業学習場面で実施内容を先生に報告するというコミュニケーション行動を取り入れたそうです。

その支援学校の先生は、「すごいね! がんばったね!」と言語賞賛をガンガン取り入れて(ちょっとしつこいくらいに)生徒にフィードバックしていました。そうしたほうが生徒たちが喜んで報告してくれて、行動の定着につながると考えたわけですね。

結果、実際何人かの生徒は目論見通りとなりましたが、何人かは真逆の結果となりました。

この真逆の結果を示した生徒に対してこの先生が素敵だったのは、「こいつは報告できないやつ!」とレッテルを貼るようなことはせずに、「もしかして、私の考え(絵に描いたように褒めた方が本人が喜んで報告する)が当てはまらなかったのかな?」と考えて、「すごいね!」とあからさまに褒めるのをやめて、「わかったよ」とあっさりかつ淡々と報告を受け取り、その後のレクリエーションにするっと移動させるようにしたことです。

すると、その数人の子どもたちはさらっと報告することができるようになったそうです。

誰しも密な関わりが好きなわけではなく、暑苦しいのは嫌いという人も(むしろ)多いわけで、このあたりの好みは障害の有無と関係ないですよね。

コミュニケーションは問答無用に人に合わせるものでも相手を自分に合わせさせるものでもなく、その状況や落としどころを考えて、一緒にすり合わせるものだし、そのプロセスをいかに一緒に納得して構築するかが大事なんです。

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