東日本大震災--被災者の心理的サイクルのスピードは異例の遅さ
東日本大震災、しかも原発事故が重なるといった大災害が起こった時に被災者は、いったい、どのような心理状況を経過するのか。
大災害、大事件、それに大事故、それを身の回りで経験した人々は、心理面でも過酷な思いを体験するといわれる。ストレス障害--心のケアもそれにつれて必要になる。
だが、大震災、それに原発事故の体験者の心のケアをできるカウンセラーはそう多く存在するとは思えない。体験の格差が大きく、カウンセラーの“体験負け”が否めない。それを埋めるのは簡単ではない。
大災害被災者の心理的なサイクル
東京都福祉保健局が発行した『災害時の「こころのケア」の手引き』によると、大災害時の被災者の多くは、「茫然自失期」→「ハネムーン期」→「幻滅期」→「再建期」という心理的経過をたどる、とされている。
「茫然自失期」、これは文字どおり茫然自失の状態となり、感覚や感情がなくなったりする。大災害時に自己の危険を顧みず、行動したりする人も出るといわれる。
「ハネムーン期」、ここでは過酷な災害を体験し、くぐり抜けてきたことで被災者たちが周囲と強い連帯感を持ち、被災地全体に助け合い、頑張ろうというムードが生まれる。
「幻滅期」となると、被災者の忍耐が限界に達し、やり場のない不安や不満が生じたり、連帯感が失われたりする。「ハネムーン期」の反動ともいえる。
そして「再建期」。大災害のフラッシュバック現象は起こったりするが、地域の復興や生活再建への自信が戻る。
ただし、復興から取り残された人たちは、ストレスに見舞われたりする。
今回の東日本大震災、原発事故はあまりの巨大な災害だったこともあり、この4期の心理的なサイクルがそれぞれ異例の長さになっている。
心理学学者やカウンセラーなど専門家の多くは、大震災直後から4期の「心理サイクル」が長期化すると予想していた。はたせるかな、「心理サイクル」の現実はその予想通りになっている、というのが一致した見方である。
つまり、普通の災害や事件、事故なら、この心理的なサイクルが割合速いスピードで進む。しかし、この東日本大震災、原発事故ではサイクルの推移スピードが異例なほど遅いということだ。衝撃の大きさ、深刻さを物語る、と言っても間違いではないだろう。
アメリカでは、2001年に同時多発テロ事件の「9・11」が起った。この事件も未曾有なもので人々の心理に大きな影響を残した。この事件の心理的なサイクルも異例の長期にわたるものだった。
大事件や大事故が起きる。人は心の整理やリセットができない。気持ちが高揚したり、反対にへこんだり落ち込んだりという心理サイクルを何度も繰り返して、時間をかけながら“通常”“平常”に戻るプロセスが必要である。
(東洋経済HRオンライン編集部)
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