被災地復興で芽生え始めた「関係者がWin−Win」となるビジネスモデル
勝俣 有希子
11月下旬、岩手県職員の方の招きで同県大船渡市・陸前高田市を訪れた。両市とも大きな津波被害を受けた場所であるが、特に陸前高田市は1500人以上の死者が出るなど被害が甚大で、震災から8カ月以上経っても、がれきの山はうず高く残ったままだ。復興にはまだまだ長い時間がかかることを痛感させられた。
被災地で事業を営んでいた企業にとっても、復興への道のりは険しい。復興計画の遅れや法的問題もあり、建物・店舗を構えて事業を始めることは難しく、さらに顧客であった地元住民も散り散りになり、売り上げを元の水準に戻すことは簡単ではない。
金融機関から資金調達するにしても、担保となる資産がなくなっており、震災前のようにスムーズにはいかない。
岩手県はこうした企業の二重債務問題にいち早く取り組み、「岩手産業復興機構」を設立。債権買い取りにより被災企業の資金調達を支援するという政策を展開している(→関連記事)。
被災企業にとっては財務の安定化、資金調達を助ける政策として期待されている。こうした支援策もあり、厳しい環境の中でも復興に向けて動き出す企業が少しずつ出てきている。今回はこうした復興に懸ける被災企業2社の経営者に話を伺った。
地元企業の復興への取り組み
1社目は水産物のインターネット販売を営む「三陸とれたて市場」(八木健一郎社長、大船渡市)。同社は地震後の津波により、水揚げされた水産物を加工処理する「番屋」や店舗施設などが流されてしまった。