被災地復興で芽生え始めた「関係者がWin−Win」となるビジネスモデル

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 だが、八木社長はそこで働いていた「浜のお母さん」たちの雇用創出をと考え、未使用の漁網を使った「浜のミサンガ」を作り、販売することにした。「浜のミサンガ 環(たまき)」はインターネットを中心に話題となり、一時は売り切れが続くほどの人気商品となった。

被災地では雇用は大きな問題となっている。特例で延長されていた失業保険の給付期限も2012年1月まで。給付が切れると仕事を求めて他地域・他県への人口流出が増えることが懸念されている。
 
 大企業の進出による雇用創出でカバーするという手もあるが、沿岸地域の労働者は高齢化も進んでおり、新たな仕事やスキルを覚えるのはそうたやすいことではない。



 「三陸とれたて市場」のように地元企業による慣れた仕事を再開できることは理想である。現在、八木社長はさらなる安定雇用のため、「浜のミサンガ」の次なる柱として、CAS冷凍(セルアライブシステム冷凍)という技術を使った新たな流通の形を構想している。

CAS冷凍は、食品の細胞膜を傷つけずに冷凍させる技術で、通常の冷凍方法に比べて、水産品を凍らせても劣化がほとんど起こらず高鮮度を保てるのが特長。これを利用して地元の郷土料理や水産品を外食産業などの店舗に流通させようというのだ。

これが実現すれば、旬の味覚を風味が劣化することなく、全世界に提供可能となる。「浜のお母さん」たちは、ミサンガ作りから慣れ親しんだ本来の「浜の手仕事」に戻ることができる。沿岸地域の新たな水産基盤産業として復興の大きな力となるだろう。

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