被災地復興で芽生え始めた「関係者がWin−Win」となるビジネスモデル

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 一方、和菓子店を営む「御菓子司木村屋」(木村昌之社長、陸前高田市)は、津波により店舗や製造設備のほか、三代にわたって受け継がれてきたお菓子のレシピも失い、震災当初は店を畳もうと考えていた。
 
 だが、震災から数カ月後、お客様からの「木村屋のお菓子が食べたい」という声に後押しされて事業再開を決断した。

木村社長は現在、岩手産業復興機構の支援制度を活用し、事業再開の準備を進めている。小さなキッチンと製造機械を設置したコンテナを道路沿いに構え、そのすぐ近くに建設予定のプレハブ店舗での営業復活に向け、日々準備に追われている。

この2社の経営者が共通して語っていたのが「被災企業だからといって甘えてはいけない」ということだ。支援側が事業会社の場合、利益の出ないことを続けるわけにはいかず、「被災企業だから」と取引を始めても、永続的に続かないことも多い。

お互いにWin−Winでなくては、ビジネスとして成立しないのだ。ビジネスである以上、被災企業であっても支援に甘えず、自分の力で歩んで行こうという企業こそが生き残っていける。今後はこうしたモデルを本気で考えていかなければならない。

 「三陸とれたて市場」の八木社長が考える事業構想は、新しい技術を導入することによって、流通から消費者に至る一連のバリューチェーンの再構築を図り、新たな価値創造を目指そうとするものだ。まさに、成功すれば関係者がWin−Winとなることができるビジネスモデルである。

このような事業が被災地でひとつでも多く創造されれば、東北は必ず今よりも高いブランドを持つ地域として復興するはずだ。支援する側はただおカネを出すだけでなく、被災地が自立した復興を果たすために、こうした取り組みをどうサポートしていくか本気で考えていく必要があるだろう。

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