震災二重債務問題、債権買い取り機構立ち上げに岩手県が前進、10月から産業復興相談センターを開設
7月の二次補正予算成立後、被災地の各県で設立準備が進められてきた「産業復興機構」は、岩手県が他県に先駆けてその取り組みをスタートさせる見通しだ。
機構は震災直後から課題とされてきた企業の二重債務に対応する組織。中小企業基盤整備機構が8割、残りを県内金融機関や県が出資して機構を立ち上げ、被災企業の債権買い取りや投融資を行っていく。
震災後、岩手県では5月に独自の買い取りファンド構想を打ち出していたこともあり、動きは速かった。8月に地元融機関や国を交えた準備委員会を設立し、9月16日に準備委員会の合意事項を公表している。
被災企業の債権買い取りの前段階となる受付窓口として、岩手県中小企業再生支援協議会が「産業復興相談センター」を設置し、再生に向けた助言や機構への紹介を行う。相談センターの人員確保に、盛岡商工会議所が金融機関や中小企業診断士、税理士などから募集をかけており、相談員は30名ほど増やす方針(現5名)。9月30日に復興相談センターの事務所を開設し、10月7日から相談受付を開始する方針。
同相談センターで再生可能性があると判断された企業の債権が、産業復興機構での買い取り対象になる。相談センターと機構が一体的に運営されると、被災企業にとっても再建への手立てが広がることになる。
ただし、最初からこうした展望が開けていたわけではない。8月に設置された準備委員会での話し合い当初、産業復興機構で行う買い取りの考え方には隔たりがあり、一連の体制の立ち上げが大きく遅れるおそれもあった。
国が示した債権買い取りの計算方法では、債権の時価が簿価から6割強減額されるため、多くの損失負担を強いられる金融機関が難色を示し、歩み寄りが難航するとも見られた。