震災二重債務問題、債権買い取り機構立ち上げに岩手県が前進、10月から産業復興相談センターを開設

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 しかし、4回目となる9月9日、「180度ひっくり返るぐらい、事態が急転した」(準備委員会の関係者)。国は同会合で、債権の時価を算出するディスカウント・キャッシュ・フロー法の割引率について、従来の見解を撤回し、新たに3つの案を提示したからだ。

具体的には、割引率に含まれるリスクプレミアムについて、(1)デフォルトリスクを反映させる方法、(2)過去の貸出金利を勘案する方法、(3)新規の貸出金利を勘案する方法だった。これにより債権評価の選択肢が広がり、地元の金融機関から理解も得られ、機構設立のメドが立った。目下、9月中にも産業復興機構の運営会社を選定し、早期の立ち上げを目指している。

一方、「選択肢が増えたことは評価している。ただ、金融機関側として想定される買い取り価格となるのか、詳細の協議を進めて行く段階にある」(地元金融関係者)と、依然として慎重な姿勢も見られる。
 
 機構への出資総額は当面500億円と想定されているが、実際にどれだけの債権買い取りが行われるかは、まだまだ不透明なままだ。また、「債権買い取りスキームには期待がある半面、“借金の棒引き”のような誤解をしている債務者もある」という声が金融サイドから漏れ聞こえる。

最大15年の運営存続を予定する機構は、あくまで既存債権を金融機関から買い取り、元本と金利返済を「凍結」するだけ。つまり、借金が一時的に隔離されたに過ぎず、事業者の借金が消えてなくなるわけではない。凍結期間は5年と設定しており、この時点で凍結の可否を関係者で協議する。機構設立は二重債務対策の大きな前進だが、事業者には債権買い取りの位置づけを正しく理解してもらうことが重要になる。

岩手県が先行する一方、宮城県では地元金融機関から準備委員会設立の合意を取り付け、9月21日に設立総会を開催。国と地元金融機関を交えた1回目の話し合いを行った。今後4回程度の会合を予定しており「10月末までに機構を立ち上げる方向で考えたい」(宮城県経営支援課)と話す。

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