「新興政党トップ拘束」で激震、台湾政治の行方 民進党優位に回帰方向も少数与党の苦しみ続く

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民進党が優位となる可能性が高いのは、1月の国政選挙で柯文哲氏や民衆党に投票した人たちの多くが民進党支持層と重なるからだ。柯氏や民衆党を支持するのは若者・現役世代層である。当時の各種世論調査では20~30代の3~5割が同党を支持していた。それに対して、60代以降では支持率が1割以下と世代間の差が激しい。

現在の台湾社会では、台湾独立や中国との統一など極端なナショナリズム色の強い政治的主張とは距離を置く中間層が民意の主流を占める。また、この中間層では台湾の主体性を重視する台湾アイデンティティの意識が広がっており、特に若者層でその傾向は強い。

民進党支持優位でも少数与党の苦しみ強まるか

社会を分断している独立・統一といったイデオロギーの立場について強く打ち出さず、これらのイデオロギーと結びついて捉えられる2大政党とその既得権益への批判を展開することで第3極として支持を急拡大させた。ただ、同党が失速したことで大半の有権者の選択肢は再び民進党と国民党の既存2大政党に再び絞られることになる。

国民党は、2016年以来政権を担う民進党への反発票を一定程度集めるが、中国との距離が近いとみられ、いまだに台湾アイデンティティを核とした路線を明示できずにいる。対して民進党は元来「台湾独立」を理念とする政党だが、政権を担ってからは台湾アイデンティティをふまえた国家像として中国的要素が残る中華民国も包摂する姿勢(「中華民国台湾」路線)を明確に打ち出している。

台湾の目指す国家像について曖昧な姿勢が続く国民党と比べれば、台湾アイデンティティに訴える路線がはっきりする民進党への支持は相対的に高い。実際、8月に大手テレビ局TVBSが行った世論調査では「総統選でもう一度投票し直すなら誰に投じるか」という問いに、頼清徳氏と回答したのは49%(実際の得票率は40%)と増え、国民党の侯友宜氏は33%(同33%)と変わらず、柯文哲氏は18%(同26%)と減った。

民衆党が埋没していく中で、第3極に流れたライトな支持層を民進党は取り戻しつつあるといえる。ただ、それがすぐに民進党にプラスに働くかは不透明だ。というのも、立法院(国会)の次の選挙は2028年1月であり、それまで民衆党がキャスティングボートを握り、民進党は少数与党の状況はなおも続くからだ。むしろ民衆党が民進党政権の弾圧だと非難を強める状況では、ますます民衆党は民進党と協力しない可能性が高く、頼清徳政権は厳しい国会運営を強いられるだろう。

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