拙著『きみのお金は誰のため』では、お金と社会の仕組みを説明しているが、お金を奪い合うことよりも、未来を共有することの重要性を経済的な視点から説明している。
七海はまだ眉間にしわを寄せていた。
「お金の移動はわかります。ですけど、金利の分だけ、お金は増えるのではないでしょうか。日本は低金利ですが、預金していれば利息がつきますよね」
ボスは「いや」と一度首を横に振ってから説明を始めた。
「利息もまたお金の移動なんや。利息ってのは、銀行がもうけたお金を、預金者に払っているだけや。空中からパッと出てくるわけやない。金利の分だけお金が増えると思うのは、よくある誤解や」
(中略)
「そういう話やない。値切って安く買おうとするのも、客に高く売りつけることだけ考えるのも、お金の奪い合いや。共有できることは他にある。少なくともおばちゃんは、君がおいしくどら焼きを食べる未来を共有してくれていると思うで」
優斗はテーブルに1つだけ残ったどら焼きを見つめながら、その言葉の意味を考えた。
家族や近所の人たち、部活の仲間だって、未来の幸せや目的を共有している。たしかに、お金は奪い合うことになる。だけど、共有する未来をいっしょに思い描ければ、協力することはできそうだ。
『きみのお金は誰のため』116ページより
日本全体で「足りないところ補い合う」意識
小泉氏は、「足りないところを補ってくれる最高のチームを作る」と言っていたが、これはチーム日本としても同じことが言えるだろう。
国の中にも仲間意識があれば、新しいチャレンジをする人や会社を叩こうとする人も減るだろうし、仮に失敗したとしても、それはチーム日本として、次の挑戦に活かせるはずだ。
その仲間意識を持つためにも、共有する日本の未来を描いてくれるリーダーが必要とされているのではないだろうか。
そして、私たち1人ひとりも、周りとの協力を意識したほうが、気楽に暮らしていけると思うのだ。
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田内 学
お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家
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たうち・まなぶ / Manabu Tauchi
お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家。2003年ゴールドマン・サックス証券入社。日本国債、円金利デリバティブなどの取引に従事。19年に退職後、執筆活動を始める。
著書に「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」総合グランプリとリベラルアーツ部門賞をダブル受賞した『きみのお金は誰のため』のほか、『お金のむこうに人がいる』、高校の社会科教科書『公共』(共著)などがある。
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