調剤大手アイン、500億円買収で小売り強化の成算 フランフラン買収、シナジーで出店増を狙え

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もう一つ考えられるのが、商品開発ノウハウの共有だ。

フランフランの強みは、長年、若年層に受け入れられる商品を開発し続けていること。SPA(製造小売業)として、商品の企画から販売まで一貫して行ってきた。新たなトレンドを予測し、商品を開発できる人材を多く抱えていることで、年月が経っても若いファンを惹きつけているのだ。

若年層の化粧品に強い小売店には、ロフトやプラザといったバラエティショップがある。アインズ&トルぺは季節に合わせたギフト商材の分野では後れを取っていた。フランフランは季節商材の開発が得意分野。同社のノウハウを共有して改善していく方針だ。

「不合理なほどに高い価格」とオアシスは批判

買収に関連して、乗り越えなければならない課題もある。香港の投資ファンド、オアシス・マネジメント(4月23日時点でアインHD株を14.89%保有)は「アインHDの企業価値を向上させる最善利益のために行われたものでない可能性」(原文ママ)があると主張している。

アイン薬局は病院内への出店なども進めてきた(記者撮影)

オアシスはアインHDの大株主でもあるセブン&アイHDから「不合理なほどに高い価格」でフランフラン株を買い取ったとして、「アインHDの大谷社長が経営権維持についてのセブン&アイHDからの継続的な支持を獲得するために、過大な対価を供与する試みである可能性がある」などと批判しているのだ。

アインHDは今後、オアシスを納得させるだけのシナジーを創出していかなければならないだろう。

アインHDの主力の調剤事業では、中長期的な採算悪化も不安視されている。公定価格である薬価が毎年引き下げられ、仕入れ価格の差で儲ける薬価差益は減少傾向だ。

昨年、アインHDの子会社の元社長らが、病院の敷地内薬局の出店をめぐる入札妨害事件で有罪判決を受けるなどガバナンスの問題もある。今年の調剤報酬改定では病院敷地内薬局の報酬が減額されるなど、業績への影響も懸念される。

ドラッグストアも脅威だ。既存店に調剤薬局を併設するドラッグストアは出店スピードが速い。アインHDの調剤薬局店舗数が1200超の一方、ドラッグストア大手のウエルシアHDの調剤薬局店舗数は2100を超える。

競合の日本調剤やクオールHDが医薬品製造事業などに注力する中、アインHDは小売り強化の独自路線を進む。フランフランの買収はその最重要戦略。早期にシナジーを創出し、成長を実現することが求められる。

伊藤 退助 東洋経済 記者

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いとう たいすけ / Taisuke Ito

日用品業界を担当し、ドラッグストアを真剣な面持ちで歩き回っている。大学時代にはドイツのケルン大学に留学、ドイツ関係のアルバイトも。趣味は水泳と音楽鑑賞。

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