――親の反応はどうでしょうか?
高校生はすでに、1日に2.5時間から多い人で7時間くらいスマホを使用しているという調査があります。仮に、1日に6~7時間スマホ漬けになってしまっている子はスマホ中毒なので、それは親も学校も解決できませんから福祉や医療分野など、社会をあげて取り組む課題だと思います。
そうではなく、普通に3~4時間スマホを使っている時間の中で、少しでも学習っぽいもの、たとえば受験サプリの気に入った教科の先生だったり、私の「よのなか科」やマイケル・サンデル教授のディベート講座だったり、そうした学習にスマホを使用する時間が奪われていくなら、親としてもありがたいのではないでしょうか。
――今後入試改革が行われるとして、大学側はきちんと評価ができるでしょうか。
確かに、生徒を面接する大学教授自身に情報編集力があるのかということはあります。海外の場合、ハーバード、スタンフォード、オックスブリッジは、入試に特化した職員がいて、その人件費に莫大なコストをかけている。ある大学の入試担当の部長は、ある分野で博士号を持っていて、千万単位の年収を得ている。
一方、日本では大学の事務はそこまで力を入れていないので、同じことをしようとすると難しいと思います。欧米と同じようなリクルーティングができるのは、予算的に東大くらいかもしれません。
高校の先生側もすぐ対応できる方は限られているでしょう。教員養成大学もアクティブラーニングへの対応は一部しかできていません。これではかなり難しいものがあります。
意見は聞かれなければ生まれない
――紙こそ学習に適しているという声も根強くあります。藤原さんは不要とお考えですか。
書かせることは当分大事だと思っています。私は「よのなか科」のオンライン授業でも、50編すべてにワークシートを特別に編集し、200字の意見文を書くという仕様にしています。紙で書かなくてもいいという段階になるには、かなりの技術開発が必要だと思います。それこそ、B4かA3版の、紙の質感のディスプレーが出るなら使えるなと思いますが。
あまり皆さん気づかないのですが、書いて書いて書きまくるから、自分の考えが定まってくるということがあります。もうひとつ、質問されまくるから、ある考えが固まるということも。これらはとても大事なことです。意見は聞かなければできないものだというのを学校の先生も意外と知りません。
だからこれからスマホを使って、生徒に意見を聞く時間を圧倒的に増やしたいのです。
授業中「わかる人?」といって手を挙げさせると、だいたい40人中成績優秀な生徒5人くらいと、目立ちたがり屋の生徒2人くらいが手を挙げるということになります。あとの33人は脳が働いていない状況です。全員の脳を働かせるためには、意見を聞いて、全員にスマホから自分の意見を送信させる。それをスクリーンで共有することが重要だと思っています。
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