なぜ地方では新しい事業がつぶされるのか ビジネスの芽を摘む「地域魔女狩り」の仕組み

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例えば、先日の地方創生サミットにもご登壇頂いた、石垣島のジュエリーブランド「TILLA EARTH」(ティーラ・アース)の平良静男社長がこうしたケースにあてはまります。今でこそ、石垣島から沖縄本島、伊勢丹本店にも進出して成長を続けていますが、石垣に800万円もかけて小さなショップをオープンした時、「そんな立派な店なんか石垣では流行らない。3日でつぶれる」といったことを周囲から言われたと語っています。

地元では、数百円のおみやげ販売が中心の中、高付加価値商品の製造販売などは不可能だと思っていたわけです。しかし、サンゴや太陽といった石垣島らしさを出した同社のジュエリーは、見事に大輪の花を咲かせ、今や全国だけでなく、その名は海外にもとどろいています。ティーラ・アースなどの活躍がきっかけとなって、今は石垣島からさまざまな高付加価値商品やサービスが生まれ、展開されるようになっています。

事業に集中、実績をあげれば評価は外から高まる

今回のコラムをまとめましょう。地域での新規事業は初期段階ではさまざまな人から「あれやこれや」と言われますが、それらの言葉に左右されることなく、やり過ごし、仲間と共に事業に集中し、トライ・アンド・エラーを続け、実績をあげれば、評価は後からついてきます。

重要なのは、結果を残すことです。結果がでれば、評価は後からついています。特に評価は、大抵の場合、地域内ではなく地域の外から高まります。外が評価する事実をもとにして地域内での評価も高まるという構造です。この順番を常に意識しなくてはなりません。

千里の道も一歩から。始める前からいたずらに値踏みなどせず、始めた後は集中し、事業をどんどん軌道修正しながら成果を出すことに専念する。これこそ、地域における取り組みで常に意識しなくてはならない鉄則です。
 

木下 斉 まちビジネス事業家

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きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年東京生まれ。1998年早稲田大学高等学院入学、在学中の2000年に全国商店街合同出資会社の社長就任。2005年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業の後、一橋大学大学院商学研究科修士課程へ進学、在学中に経済産業研究所、東京財団などで地域政策系の調査研究業務に従事。2008年より熊本城東マネジメント株式会社を皮切りに、全国各地でまち会社へ投資、設立支援を行ってきた。2009年、全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事就任。内閣官房地域活性化伝道師や各種政府委員も務める。主な著書に『稼ぐまちが地方を変える』(NHK新書)、『まちづくりの「経営力」養成講座』(学陽書房)、『まちづくり:デッドライン』(日経BP)、『地方創生大全』(東洋経済新報社)がある。毎週火曜配信のメルマガ「エリア・イノベーション・レビュー」、2003年から続くブログ「経営からの地域再生・都市再生」もある。

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