大量閉店「ヴィレヴァン」経営が犯した最大の失敗 山ほどある判断ミス、一番まずかったのはこれだ

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ヴィレヴァンは「イメージ」を売っていた

ヴィレヴァンを「ベネフィット」という点から見ていくと、その経営不振の原因も、わりとクリアに見えてくる。

ドンキにはなぜペンギンがいるのか (集英社新書)
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ヴィレヴァンは「センスがいい」という「イメージ」を売る店であり、その目に見えない概念を売るためには、社員にそのイメージが共有されている必要がある。しかし、それが途絶えてしまった現在(ヴィレヴァンは社員登用のハードルが高く、アルバイトでありながら、職責の大きな店長として働く人が多く存在してきた)、ヴィレヴァンは当初のような「ベネフィット」を人々に与えることができなくなってしまったのだ。

また、ヴィレヴァンの場合はセンスを養ううえで、「仕入れ」が重要な要素になってくる。かつては各店舗で行っていた仕入れが、コロナ禍で本部一括になった……というのは最近語られ出していることだが、その間に従業員の入れ替わりは進んでいる。

また最近では、各店舗での仕入れは復活しつつあるというが、取材をしていると「たしかに仕入れはできるが、売り切らないと、翌月の予算を下げられてしまう」という話も聞く。「それじゃあ誰もリスクを取らないよ」という感じだし、確実に売れるものを置こうとするだろう。結果、店舗の「金太郎飴」化は進んでしまう……。

「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは、現場主導の店作りをしてきたことで知られる企業だが、その理念は主権在民ならぬ「主権在現」(主権は現場にある)という4文字で表現されている。その結果、その立地や、地域に合わせた業態を多く生み出した。

例えばシンガポールでは、日本に全振りした「ジャパンブランド・スペシャリティストア」なるコンセプトを押し出し、現地では高価な日本の食を、手頃な価格で販売している。輸入だと高いので、現地にある日系企業の食品工場と手を組んで作ってしまう……という大胆な発想の転換があるのだが、これも消費者と接している現場を尊重するからこそ、見えた勝機だろう。

自社が、消費者に提供しているものは何なのか? ヴィレヴァンの凋落は、多くの人に「顧客視点」や「マーケティング」、「(本当の意味での)権限委譲」の大切さを教えてくれるのだ。

【2024年9月12日23時30分追記】初出時より記事の一部を修正しました。

谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

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