日本にも蔓延する「ポジティブ思考」という病 「いつもニコニコ」が成功の妨げになっていた

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では、いったいどうすれば自分の描いている夢をよい形で実現できるのか。それは、ポジティブな夢を見たすぐ後に、夢を叶える過程で起こりうるさまざまな困難や壁を想像し、それらを乗り越える方法を考えること……これに尽きます。博士は夢と現実を対比させることが大事だとし、著書の中でこのことを「メンタル・コントラスティング(頭の中での対比)」と紹介しています。

上記の「海外への憧れ」に関していえば、「その国のよいところ(ポジティブ)」を空想するのと同時に、実際に起こりうる「その国でのトラブルや問題(ネガティブ)」をも想定し、それに対する自分の対処法も考えておくと、海外生活も楽しいものとなりそうです。

私の場合は来日の際、日本への夢をふくらませるとともに「もしも日本で体育会系気質の職場に入ってしまったら、ドイツで育った人には適応が難しいかもしれない。でももしそうなったら、なるべく早くほかの職場を探そう。でも『石の上にも三年』というし、3年間は日本に住んでみよう」と考えました。私の来日後の生活が成功しているかどうかには疑問が残るところですが、少なくとも過剰な「びっくり」や「がっかり」はなかったように思います。

便利な日本語「ダメもと」こそ、成功の秘訣

成功するにはポジティブ思考を捨てなさい』 ガブリエル・エッティンゲン著 大田直子訳(講談社)ソフトカバー、256ページ、定価:本体1600円(税別)上の画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

本の中では夢を叶えるための現実的な手法としてWOOP(Wish(願い)、Outcome(結果)、Obstacle(障害)、Plan(計画))が紹介されています。最初に「痩せている自分」というポジティブな空想をしても、そこに留まらなければ夢の実現は可能としています。

WOOPの手順でいうとまず、具体的には「朝にジョギングすること」を「願い」(Wish)とする。その後「体調がよくなる」という「結果(Outcome)を想像し、ジョギングをするにあたって起こりうる障害(Obstacle)、たとえば仕事から帰宅後に疲れていること、を想像する。最後が非常に重要なのですが、障害を乗り越える計画(Plan)を立てること。たとえば「もしも、仕事の後に疲れて帰宅したら、何も考えずとりあえずランニングシューズを履いて外に出よう」といった具体的なものだと成功率が高まります。WOOPはなるべくリラックスした環境でやると効果的なので、お風呂の中でやってみるのもよいかもしれません。

最後になりましたが、日本語には「ダメもと」という便利な言い回しがあります。まさにこの「ダメもと」という言葉に本の内容が要約されているようにも思えました。すべてにおいて過剰な期待をせず、全力をあげながらも「ダメもと」の精神で挑めば地に足がついたまま夢に向かうことができそうです。

世に蔓延しているポジティブ思考はほどほどにしておいて、「願いを叶えたければ(ネガティブな)現実も見よう!」と日々唱えれば一歩夢に近づけるのかもしれません。

サンドラ・ヘフェリン コラムニスト

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Sandra Haefelin

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴20年。 日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフといじめ問題」「バイリンガル教育について」など、多文化共生をテーマに執筆活動をしている。著書に『ハーフが美人なんて妄想ですから!!』(中公新書ラクレ)、『ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(ヒラマツオとの共著/メディアファクトリー)など著書多数。

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