日本にも蔓延する「ポジティブ思考」という病 「いつもニコニコ」が成功の妨げになっていた

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

そんな環境で育った私は、ネガティブな話をすることがイコール敬遠されるべきことだとは長年思ってもみませんでした。ところが来日後、日本人、ドイツ人、米国人が多くいる職場で働くようになってから、じつはネガティブ思考やネガティブ発言をよしとしているのはドイツ人だけであるということを実感させられました。

ドイツ人に「元気?」と聞けば「ちょっと猫の具合が悪くてね……」という返事が返ってくることも少なくないのに、米国人にいたっては「元気?」と聞けば必ず「元気!」という答えが返ってきたものです。

そして日本人も基本ポジティブ思考です。たしかに米国人よりは愚痴の頻度が多い気がしないでもないですが、そうはいっても日本の社会全体に「ポジティブ思考」が広く浸透している印象を受けます。

忙しいは「心を亡くす」と書く!

ちなみに前述の職場では、ある日本人女性に「『忙しい』という言葉はネガティブだから、言わないようにしているんです。だって『忙しい』という漢字は『心を亡くす』と書くんですよ」と言われました。恐れ入ると同時に「『忙しい』と言う行為って、そんなにネガティブなことだったんだ!」と私はショックを受けました。

「忙しい、忙しい」と言っていると運が逃げていき、不幸を呼び込みやすいと説明されましたが、はたしてポジティブな言動や空想だけで、人生、本当にそううまくいくものなのでしょうか。

日本でも「なりたい自分になるためには、すでにそうなっている自分を想像してイメージトレーングをして!」などとよく言われていますが、はたしてポジティブな空想をすることで本当に何かを成し遂げたり、結果を出すことができるのでしょうか? と疑問に思っていた矢先に出会ったのが『成功するにはポジティブ思考を捨てなさい』(著者: ガブリエル・エッティンゲン 訳: 大田直子 / 講談社)という本です。

むしろネガティブ思考が成功に導くと書かれているこの本、著者であるガブリエル・エッティンゲン博士がドイツ人だということにまず納得した次第です。ただしこの本、著者がドイツ人だからネガティブ思考を絶賛しているのではなく、20年間の研究結果をまとめた本であるという点に説得力があります。博士が米国とドイツの両国で「モチベーション」に関する科学的研究を続けた結果、やみくもなポジティブ思考は、むしろ成功の妨げになることがわかったのです。

次ページ「ダイエットに失敗する」と考えたほうが痩せる!
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事