日本にも蔓延する「ポジティブ思考」という病 「いつもニコニコ」が成功の妨げになっていた

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たとえばダイエットについて。私の周りでも「ダイエットを成功させるためには、痩せた自分を想像してイメージトレーニングをすること」が称賛されているフシがありますが、エッティンゲン博士のデータによると、「友人と出かけるスリムな自分」そして「ドーナツという誘惑のそばを顔色ひとつ変えず、いとも簡単に通り過ぎる自分」というポジティブな自分を思い描いた人たちのほうが、「ついドーナツを食べてしまうといったネガティブな自分」を思い描いた人たちよりも、1年後に減った体重が11キロも少なかったのだそうです。

なお「自分は体重を減らせそうだ」といわゆる「ポジティブ思考」だった女性たちのほうが「自分はあまり減量できそうにない」と思っていた女性たちよりも、やはり1年後に平均して12キロ体重が多かったというデータがこの本には紹介されています。

憧れが強すぎると海外生活はできない

ダイエット開始の際に「痩せている自分」を想像(ポジティブ思考)してしまうと、人間の心はその空想で満足してしまい、ダイエット開始後に起こりうるさまざまな壁に立ち向かうことができなくなってしまうのだそう。そして空想の中で夢を叶えてしまうと、現実世界での、夢を叶える途中で起こりうるさまざまな困難を前に力を出し切れないのです。

これは何もダイエットに限らず、就職活動、恋愛などあらゆる分野において当てはまる法則です。一目惚れをした女性について、すでに自分がその女性とデートに出かけ、一緒に旅行をしたり、夕日を一緒に見たり……というポジティブな空想をしている男性は、実際にその女性に声をかけたりデートを誘うまでには至らないことが多いのだとか。

就職活動においても「素敵なエリアの広々としたオフィスで仕事をしている自分」というポジティブな空想を頻繁にしていた人ほど、2年後の追跡調査では就職活動に成功していなかったとエッティンゲン博士は述べています。企業に送った応募書類も少なく、会社からのオファーもあまりなく、結局は所得も低いのだそうです。

そういえば「外国に住みたい」と、海外への憧れを抱いている人に関しても、その国に対してポジティブな憧れが強ければ強いほど、実際にその国の地を踏むことはなかったりします。また、実際に外国に行ってはみたものの、行った先でガッカリし、その国に失望してしまい、結局長くその国に住むには至らなかった、なんていうのはよく聞く話です。

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