プーチンと国民の離反を狙うウクライナ軍の戦略 モスクワなど大都市への攻撃可能性も

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ゼレンスキー氏としては、今回終結案を巡り、バイデン政権などとの間で合意ができれば、近い将来ウクライナを戦場での「勝者」にすると確約を得て、それに見合った軍事支援を得ることを意味する。

ゼレンスキー氏は逆に終結案で合意できなければ「ウクライナの軍事的敗北につながり、それはアメリカの責任になる」として、アメリカ側を強く牽制する構えという。

ATACMSによる攻撃が可能になるか

一方でゼレンスキー政権には、軍事作戦面の別の緊急課題がある。アメリカが供与した地対地ミサイル「ATACMS」(射程300キロメートル)のロシア領内への使用をバイデン政権に認めさせることだ。

現在ロシア軍は、自国上空にいる戦闘機などからウクライナに向け滑空誘導弾を発射し、多くの市民に犠牲者を出している。ウクライナとしてはATACMSなどでロシア領内にある空軍基地を叩き、滑空弾を搭載したロシア機が飛べないようにするしか打つ手はないとみている。

しかしバイデン政権としては、ロシアとのエスカレーションにつながることを警戒して、ATACMSのロシア領内への使用を認めていない。

この問題を巡り、ウクライナはイギリス、ドイツ、フランスの3カ国を巻き込んでバイデン政権と協議を続けている。ウクライナに同情的な3カ国からの後押しを期待している。

ウクライナに武器支援していない日本は現在、この問題の協議から外れている。しかしウクライナ情勢は極めて重要な時期を迎えている。ゼレンスキー政権が戦争の帰趨を懸けて始めた、新たな反転攻勢に対し、日本政府がしっかり何らかの支援を行うべきと考える。

吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長

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よしだ しげゆき / Shigeyuki Yoshida

1953年、東京生まれ。東京外国語大学ロシア語学科卒。1986年から1年間、サンクトペテルブルク大学に留学。1988~92年まで共同通信モスクワ支局。その後ワシントン支局を経て、1998年から2002年までモスクワ支局長。外信部長、共同通信常務理事などを経て現職。最初のモスクワ勤務でソ連崩壊に立ち会う。ワシントンでは米朝の核交渉を取材。2回目のモスクワではプーチン大統領誕生を取材。この間、「ソ連が計画経済制度を停止」「戦略核削減交渉(START)で米ソが基本合意」「ソ連が大統領制導入へ」「米が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの脱退方針をロシアに表明」などの国際的スクープを書いた。

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