プーチンと国民の離反を狙うウクライナ軍の戦略 モスクワなど大都市への攻撃可能性も

✎ 1〜 ✎ 167 ✎ 168 ✎ 169 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

いずれにしても、「パリアンツィア」や弾道ミサイルの開発に成功したことは、ウクライナが独自にロシアへの長距離爆撃能力を保持したことを意味し、今後の戦況への潜在的影響は大きいだろう。

ほかにもロシア本土とクリミア半島を結ぶクリミア大橋への大規模攻撃も今後に向けた可能性の1つとして挙げられるだろう。

ゼレンスキー政権としては、攻撃対象がどこであれ、クルスク越境作戦と同等かそれ以上のインパクトを与える軍事作戦を近く実行することで、国内政治的にプーチン政権を一層の窮地に追い込むことを狙っているだろう。

こうした軍事的優位を背景に、追い込まれたプーチン政権に対し「力の立場」で停戦交渉を提案し、1991年の国境線までのロシア軍の撤退などを求める構えとみられる。

アメリカの了解を得たいゼレンスキー

ゼレンスキー氏は2024年8月末の記者会見で、9月後半に訪米して、ウクライナの戦勝を骨格とした戦争終結案をバイデン大統領に提示する意向を初めて表明した。11月のアメリカ大統領選で争うハリス副大統領とトランプ前大統領にも内容を伝えるという。

ゼレンスキー氏はこの戦争終結案の具体的内容を明らかにしなかったが、先述したように軍事的優位性をバックにしたロシア軍撤退交渉案が念頭にあるとみられる。

この戦争終結案でアメリカとの合意を急ぐ背景には、バイデン政権がウクライナによる自国防衛を助ける一方で、ウクライナに向かっては戦場でプーチン政権を軍事的に敗北させると明言してこなかったことがある。

プーチン政権を崩壊させればロシアが大混乱に陥り、核兵器の管理も危うくなる状況を恐れているとみられている。これが、ゼレンスキー政権が、最大の軍事支援国であるアメリカに感謝すると同時に、これまで不信感を抱いてきた理由である。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事