震災、原発事故で飼い主の元に帰れない犬猫たち、獣医師らが支援活動に奮闘
ボランティアが少ないため、石巻のような「1日1回の散歩、2回のご飯」が福島ではできないからだ。「2~3人の職員および平均5人程度のボランティアで160~170頭(匹)の犬や猫の世話に当たらざるをえない」(福島県動物救護本部の平野井浩本部員=獣医師)。
そのため、1日1回の食事および一部の犬を散歩させるだけで精いっぱいだという。食事以外の時間は、犬、猫ともケージの中でじっとしているしかない。
それでも犬や猫はけなげだ。東海林さんが抱きかかえると、犬や猫は大喜び。「爪切りも全然嫌がらない。寂しがっている証拠です」(東海林さん)。
現在、直面する課題は、人手不足の解消、運営費の確保、飼い主や里親に早く動物を渡すことなど、極めて多い。
人手不足は慢性的で、まさしく猫の手も借りたい状況。「土地・建物とも民間から借りているうえ、周辺に民家があるため、場所については非公表にせざるをえない」(前出の平野井本部員)というハンディもある。
シェルターの運営費は全額が義援金によって賄われていることもあり、ゆとりはない。飼い主の元になかなか帰ることができないという問題も大きい。
原発事故以前は福島県大熊町に住んでいた石母田正幸さん(36、下写真)は11月3日、飼い犬のコンタ(メス、10歳)に会うために、避難先のいわき市から2週間ぶりに会いに来た。コンタは7月に一時帰宅した際に、生きていることが判明。連れて帰ってきたが、現在の借り上げ住宅では飼育することができない。そこでやむなくシェルターにお世話になっている。
石母田正幸さん(左)
現在、石母田さんの家族は、会津若松市内の仮設住宅で暮らす。「一軒家を借りて、家族全員で住むことができれば、犬を連れて帰ることができるのですが……」と石母田さんは歯がゆい思いをしている。
その一方で、「目の前の生活に追われていて、犬猫を連れて帰るところまで気が回らない飼い主も少なくない」(平野井本部員)。県では「飼い主にはできるだけ早く連れに来てほしい」(同氏)というが、なかなか進んでいないという。飼い主がいなかったり、飼い主の承諾を受けた犬や猫は里親探しを続けている。
困難が目につく救護活動だが、支援の輪は少しずつ広がり始めている。東海林さんの呼びかけで、石巻で一緒に活動していたボランティア仲間が福島にやってくるようになった。都内で勤務する長谷川潤さん(42、下写真)もその一人だ。
長谷川潤さん
長谷川さんは獣医師ではない。ただ、「もともと動物が好きで、原発事故の避難の際に取り残された犬や猫を助けたいという気持ちは当初からあった。今回、福島で活動して、それがようやく実現できた」と語る。
福島の動物を取り巻く環境は、すぐに好転することはなさそうだ。それだけに息の長いボランティア活動が命綱になっており、一人でも多くの参加が待ち望まれている。
(岡田広行=東洋経済オンライン)
※福島県動物救護本部
http://www.pref.fukushima.jp/eisei/saigai/kyuugoindex.htm
※福島県獣医師会
http://www.fva.or.jp/
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