堅調なユーロ相場はこれからも続くのか--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授
これは短期的にはうまくいくかもしれないが、もしソブリン債のデフォルトリスクが現実のものとなれば、今度はECBに資本注入が必要になる。経済が比較的強いユーロ圏北部の諸国がこうした資本移転を嫌がった場合(実際に政治的な抵抗は強い)、ECBは貨幣創出によって自らに資本注入することを余儀なくされるかもしれない。どちらにしても深刻な金融危機の脅威は大きい。
ユーロ上昇を支持する六つの確信のない理由
一方、ユーロの現行水準維持あるいは一段の上昇を支持する議論は何だろうか。
まず第一に投資家は自らにこう言い聞かせているかもしれない。最悪のケースのシナリオにおいては、北部の欧州諸国が経済の比較的弱い諸国を事実上追い出してスーパーユーロを作り出すと。このシナリオには一定の真実味があるものの、どんな形の分裂でも大きなトラウマとなるのは確かであり、後に残された通貨形態が回復するのは、まずユーロが急落してからである。
第二に投資家は、2008年の金融危機の震源地にあったのは米ドルだったにもかかわらず、米ドル相場が実際には上昇したことを思い出しているかもしれない。深刻なユーロ危機の影響が米国やその他の地域に雪だるま式に波及する可能性はある。おそらくこの波及メカニズムは米銀を通す形になるが、米銀の多くは資本金が十分でないうえ、時価を大幅に超えた簿価となっている抵当権付き融資を巨額に抱えていることから経営状態がなお脆弱なままだ。
第三に諸外国の中央銀行や政府系ファンドが、米国や自国経済に対するリスクをヘッジするためにユーロを活発に買い上げ続けるかもしれない。政府系の投資家は必ずしも民間投資家のように投資収益を最大化することに駆り立てられているわけではない。もしユーロ上昇の背後にある真の理由が外国当局の需要であるとしてもリスクはある。外国政府系のユーロの買い手も民間投資家と同様に最後は売り逃げようとするはずだ。