堅調なユーロ相場はこれからも続くのか--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授
このところユーロが対ドルで比較的堅調な相場となっているのはやや不可思議だ。通貨市場の参加者たちは、ユーロ圏の諸政府による最新のユーロ救済「総合対策」が2~3カ月以上持ちこたえると本気で信じているのだろうか。
この新しい計画が頼りにしているのは、一つには怪しげな金融工学的手法をいくつか併用することだが、疑問の余地が多い。そしてもう一つは小規模な資金を出すというアジアからのあいまいな約束である。民間銀行が保有するギリシャ債務を50%削減するという提案は同計画のいちばんよい部分だが、これでさえ同国の債務と成長に関する根深い問題を安定化するのには十分でない。
それではどうしてユーロは、米ドルに対して40%のプレミアムで取引されているのか。私に考えることができるのは、なぜユーロが下落する必要があるかを示す非常に正当な理由一つと、なぜユーロが安定または上昇すべきであるかを示すあまり確信のない理由六つである。
なぜユーロが下落する必要があるかをまず見てみよう。
財政および政治的な統合の大幅な強化には憲法の修正を要するが、そうした統合強化へ進む明確な道筋がない。そのため、ユーロのシステムを維持することはますます困難になっている。欧州中央銀行(ECB)がユーロ圏のソブリン債(ジャンク債)を大量に購入せざるをえなくなることは明らかだと思われる。