「100万部売れた絵本」の読者が夢中になる仕掛け 『ぜったいにおしちゃダメ?』大ヒットの理由

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事例 自分で組み立てることで愛着がわく家具

参加できることが魅力に繫がっている商品が、家具にもあります。家具ブランドの「IKEA」が提供する商品です。

IKEAは高品質なものを価格を抑えて売ることで有名な家具ブランドです。世界中に店舗があり、世界最大の家具チェーン店とも言われています。

えほん思考
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IKEAは1943年、イングヴァル・カンプラードによってスウェーデンで創業されました。カンプラードはそのとき、わずか17歳でした。社名は自身の名前と、自身が育った農場、村の名前のイニシャルを組み合わせたものです。当初は雑貨店としてスタートしました。文房具や日用品を取り扱っていました。家具を取り扱うようになったのは1948年です。

彼が考えていたことは、「人々に役立つものを、安く、確実に届けたい」ということです。IKEAは徹底的に効率化し、同業他社よりも価格を抑えた家具を顧客に提供しました。

あるとき、カンプラードは自社の社員がテーブルを車で輸送する際に、テーブルの脚を取り外していることを知りました。それは車に入るサイズにするためと、輸送中のダメージを防ぐためにしたことでした。そこから着想を得たカンプラードは、「フラットパック」形式で家具を売ることを思いつきます。

これは家具をパーツごとにバラバラにし、「フラット」な状態にして梱包したものを売る形式のことです。客は家に持ち帰ったあと、説明書を見ながら自分の手で家具を組み立てます。

これにはさまざまなメリットがあります。まず持ち運びが簡易になり、輸送費が抑えられること。フラットな状態で倉庫におけるので、効率的に保管できること。客が自分の車で持ち帰れるので、配送料がかからないこと。そして、それらのメリットによって、製品の価格を抑えることができたのです。

そのうえ、予想外な効果もありました。それは客が自分で組み立てることによって、家具に愛着がわくということです。

2011年のハーバード・ビジネス・スクールの調査によれば、人は自分の手で家具を組み立てると、既製品の家具よりも高い価値を見出すことがわかりました。調査した研究者らは、この傾向を「IKEA効果」と名づけました。

これは私たちの日々の実感にも沿っているのではないでしょうか。たとえば、スーパーで買って食べるいちごも美味しいですが、自らいちご狩りに行って食べるいちごには、ひと味違う感慨を覚えるものです。

私たちは「参加」することに特別な価値を感じるのです。

まとめ
➔提供されるものがインタラクティブだと人は前のめりに参加する
➔『ぜったいに おしちゃダメ?』はインタラクティブな要素が読者の心を摑んだ
➔IKEAの家具は客が組み立てることによって愛着がわく
考えてみよう
 あなたがよく行く店に参加要素を増やすとしたら?
 ボールペンをノックしたときになにが起こると嬉しい?
 新しいリモコンを作るとしたら、なんのリモコンでどんな機能をつける?
菊池 良 フリーライター
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