スペインで人気ラーメン屋経営する日本人の素顔 「金もコネもない」30代男性なぜ成功できた?
営業態勢は、1店舗につき2、3人で行っている。厨房担当ひとりと、ホールひとり。
シモジグループで働く従業員のほとんどは日本人だ。下地さんは、「できるだけ日本人を雇うようにしている」という。
「同じ給料を払うなら日本人のほうがちゃんと働いてくれますし、言語の面でも楽です。それに、日本人に会えることを求めているお客さんも多いので」
シモジグループの従業員でスペイン人と結婚し、ビルバオに住んで1年目のレイコさん(39歳)は、「融通がききやすく働きやすい、いい職場です」と語る。
従業員の時給も2ケタ以上で設定しており、スペインの最低賃金額である時給8.87ユーロ(約1420円)と比べても高い。加えて、スペイン語のレベルは問わないため、シモジグループの離職率が低いのも納得できる。
働く日本人スタッフの「本音」
「働きたくない」と公言するオーナーにスタッフから不満は出ないのだろうか。
初期メンバーでもあり、現在2店舗目の「ラーメン・ケイトク」を任されているスタッフの飯田竜次さん(36歳)に話を聞いた。
「オーナーが自由な人なので、働きやすいのはありますね」
元々家具店の営業をしていたという竜次さんは、スペイン在住歴6年目で、スペイン人パートナーを持ち結婚ビザで働いている。ビルバオに住む竜次さんは客として「ラーメン・シモジ」へ行った際、「うちで働かない?」と誘われたひとりだ。人と話をするのが得意ではなかったため、当初、接客をせずほかの従業員と会わないなら、と条件を提示すると「それでいいよ」と下地さんは、快く引き受けてくれたという。ところが現実はそう甘くなかった。
「ふたを開けてみたら、いきなりお客さんのところに出されるわ、ほかの従業員さんと2人っきりで働かされるわ、ユイキさん(下地さん)は途中で日本帰っちゃってお店任されるわ。で、そういうことをやっているうちに、意外と自分もできるんじゃないかと思えてきたんです」
下地さんはあまり店には来ない。竜次さんも月に1度会うくらいだという。
「顔を合わすと『会ってない間、お店のこと考えて色々やってくれてたんだね』とか『お客さんに竜次のこと言われてうれしかった』ということをストレートにさらっと褒めてくれるんですよ。そうするとなんかこう、評価されたな、がんばってよかったな、と思えるんです」
スペインではチップの文化があり、竜次さんは全店舗合わせ、チップを一番稼ぐ。接客が苦手だと思っていたが実は得意なのではないか、と新しい自分を発見したという。
「働き始めて2年で、相当変わりました。最初は従業員ともいっさい目を合わさず、『お願いします』って料理を渡すだけでしたけど、今はみんなで出かけたり、飲みにいったりします。いつか自分で居酒屋を開きたいな、とユイキさんに話したら、『休日にお店を好きに使っていいよ』って言ってもらえて。ビジョンが広がりました」
下地さんにもう一度、こだわりを聞いてみた。
「僕だけじゃなくて、スタッフもみんなで人生楽しんでいこうよ、ってその気持ちだけはブレないようにしています。休みがとりやすいシステムもそのため。僕が金儲け主義のとんちんかん野郎になったら、みんな離れていっちゃうと思いますから。みんなで楽しんでいきたいです」
そして「実は」と切り出した。
「来年4月から少しの間、韓国に住む予定なんです」
まさか、韓国にも事業を展開するのだろうか。
「韓国ドラマにね、ハマって……」と下地さんは、真面目な顔で答えた。どうやら出店ではなく、個人的な趣味のようだ。
現在下地さんは、ほかの北スペイン3都市にも店舗展開を考えているという。「韓国へ行ったときにラーメン屋を3店舗経営しているより4店舗って言ったほうが、モテるでしょ」。
「今年中に4店舗目出したいなあ」。そう言うと下地さんは、瓶ビールを飲み干した。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら