世界に広がる「反マクドナルド運動」の実態 従業員たちは何を求めているのか
関連行事は20日にクライマックスを迎え、ブラジル議会上院の委員会で、コートニーのほか何人かの政治家と従業員が証言をする予定だ。証言内容として想定されるのは、世界各地のマクドナルド店舗における苛酷な労働慣行、同社のブラジル国内での脱税行為、および欧州各地での同社による脱税と反競争的慣行と彼らが見なす事柄だ。
「欧州では緊縮経済政策を採っている」と語る欧州議会のユッタ・シュタインリュック議員(ドイツ)も20日に証言。「税収がないと社会政策問題になる。貧しい人々のための補助金や医療費を負担できなくなる」
米国で低迷するマクドナルド、CEOは交代
運動の国際展開が強化される一方、マクドナルドの財務実績は特に米国内で低調だ。同社によると3年近くにわたって悪化してきた。対照的に欧州では特にイギリスを中心として成長している。
業績低迷を受けてマクドナルドでは最高経営責任者(CEO)が交代した。新CEOのスティーブ・イースターブルックは「顧客の信頼と愛顧を取り戻すことにより、重要市場で持続的成長を再開させる」という再建策に乗り出した。
マクドナルドを「現代の進歩的なハンバーガー会社」に変身させることも彼は約束した。そしてまずは直営店すべてにおける時給の最低水準を、地域内の法定最低賃金より1ドル高くすることに踏み切った。
しかし会社の財務事情や新CEOの懐柔的な姿勢があっても、多くのアナリストはマクドナルドで労組結成という努力が実を結ぶ可能性は、相変わらずおそろしく低いものとみる。
投資家の間には脅威として真剣に受け止める様子はほとんどない。7月に第2四半期の決算についてアナリストとの電話会議があった際にも、その可能性について質問などひとつも出なかった。労組の助力により外国で生じた規制行為についてもそうなのだ。
会社の側で、労組結成に対する防御は万全のようだ。
「労組側によるマクドナルドでの組織化努力は、数十年前からあった」と、同社で15年以上働いたリチャード・アダムズは言う。「マクドナルドにとって全然新しいことではない」。彼の最後の職務は米国西部のフランチャイジング責任者で、今はフランチャイズ運営専門のコンサルタントをしている。
アダムズの説明によると、たとえ同社が直営店従業員の組織化を助けるような方針を採用しても、フランチャイズ店にはおそらく無視されるだろう。「会社にはフランチャイズ店を代表して労組側とそういう合意をするような権限はない。私がフランチャイズ加盟店主なら、連絡文書を読みもしないだろう」。
それでもマクドナルドは労使方面でまた攻め込まれている。
先日、全国労働関係委員会(NLRB)はマクドナルドがフランチャイズ店従業員の「共同使用者」であるか否かの判断に関し、同社からの異議申し立てを退けた。共同の雇用主と認定されるなら、直営店従業員が会社に譲歩させたことをフランチャイズ店従業員にも応用しやすくなる。たとえば店舗で過半数の従業員が労働組合員証に署名すれば組合成立といった規定だ。
「SEIUは望みどおりに決まったら、国外での活動でも一段と圧力をかけ、組織化に向けて何らかの譲歩を引き出したいところだろう」と、米国商工会議所のグレン・スペンサーは指摘する。