トヨタとBMW、燃料電池車の共通点と相違点 「MIRAIと双子?」のプロトタイプに乗ってみた

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試乗ができたのは、5シリーズ・グランツーリスモをベースに燃料電池システムを搭載したテスト車。オリジナルと比べて、200kgほど重量が増している

トヨタ自動車が昨年末に発売した「MIRAI(ミライ)」。説明するまでもなく、世界で初めて量産にこぎつけた燃料電池車(FCV)だ。まだまだ「夢の技術」だと思われていたFCVが市販化されたことは、世界の自動車業界を震撼させた。ダイムラー、ゼネラルモーターズ(GM)、フォードといった世界の巨人たちがかつて2010年までにFCVを市販するという目標を掲げ、躍起になって研究開発をしたにもかかわらず、まだ実現していないからである。

そんな世界の先陣を切ったトヨタとFCVの分野で組んでいるのが、BMWである。両社は環境技術で2011年末に提携関係を構築。重点分野の一つが燃料電池技術の共同開発だ。

筆者はこの夏、BMWが南仏ミラマに持つテストコースで、BMW「5シリーズGT」をベースとしたプロトタイプとなるFCVに試乗する機会を得た。市販車に搭載される前の先進技術を公開する同社のイベント「イノベーション・デイ2015」で公開されたプラグインハイブリッド車(PHV)、ウォーター・インジェクション(WI)機構を積んだ過給エンジンのレポートとともにお伝えしよう。

燃料電池車とは?

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「5シリーズGT」をベースとしたプロトタイプのFCV。約370個のトヨタ製セルを、BMWがパッケージングをした状態で搭載する。BMWではセルの独自開発も進めており、トヨタがチタン製セパレーターを採用するのに対し、BMWはステンレス製を開発中だ

そもそも、「燃料電池車って何がスゴイの?」という疑問を持っている読者もいるだろう。「燃料電池」とは名ばかりで、電池のように電気を貯めたりはしない。「Fuel Cell」という英語を直訳したゆえに混乱を招くネーミングだが、要はタンクに積んだ水素と空気中の酸素を化学的に結合させて発電する装置であり、「水素発電機」とでも呼んだ方がしっくりくる。

それを積んだFCVとは、水素をエネルギー源にクルマの上で発電しながら走る電気自動車(EV)の一種であり、エネルギーをつくる代わりに排出するのは水だけ、排ガスはいっさい出さないという究極のエコカーである。加えて、水素は地球上にほぼ無限に存在することから、化石燃料を一切使わないというだけではなく、エネルギーの枯渇の心配がない。それらがともに備わってこそ、FCVは夢の未来カーと呼ばれる。

BMWのFCVは、この試乗イベントが開かれる前に「ミライの双子では?」といううわさもあった。実際に見ると、トヨタとの提携が生かされている部分はあるものの、かなり異なる仕組みだ。具体的には、BMWが燃料電池スタックの筐体を作って日本に送り、トヨタがセルを詰めてドイツに送り返しているようだ。DC-DCコンバーターなどの電気系補機はトヨタ製だが、コンプレッサーと電気モーターと水素タンクはBMW製。制御もBMWの独自開発である。

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