世界はシリコンバレーを中心に動いている ヘタをすると既存産業は惨敗してしまう

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もう1個の流れはインターネットの上に蓄積されているデータが洗練され、使えるようになってきた。今から20年前にヤフーやネットスケープが上場したぐらいの頃は、ある意味ではインターネット上にはゴミみたいなデータがいっぱいあった。それをグーグルのような会社が、きれいに検索できるようにした。

それでもいっぱいゴミがあった。しかし、いろいろな紆余曲折を経て気づいたらインターネット上の情報っていうのは、とてつもないリッチな情報になっていたわけです。今そこに、AIとか機械がどんどん学習できるような時代になってしまうと、たぶん既存のサービス業、たとえば銀行、証券、保険などの金融ビジネスが大きな影響を受ける。つまり、これまでは専用のデータベースや独自のノウハウを使用することで手数料を取っていたビジネスモデルが成り立たなくなる。

これは衝撃的です。金融業の強さは、銀行で言えば信用調査、審査部がいろいろな調査をして、この人がどのぐらい信用できるか、おカネを貸しても大丈夫かというチェックをする機能が銀行の強みだった。保険であればアクチュアリーみたいな、統計的なデータを使って保険料率を設定できる機能が、ほかにはまねのできないものだった。ある意味では情報戦だったわけです。

気づいたらインターネットのデータのほうが実は信用できるし、情報量も豊富になっちゃった。今は逆転しつつある。そのことになんとなく気づき始めた今、フィンテックブームが起きています。その意味で、すべての金融機関は危機感を持つべきです。

個人の取引データであっても公共のもの

山田:米国では個人の取引データの多くが、インターネット上で検索可能になっている。公共のデータになっていますね。

伊佐山:そうです。米国の場合、一歩先に行っている。犯罪履歴、購買データ、不動産の取引データなど多くがパブリックデータになっている。僕が買った家がいくらで売られたかとかも全部検索できてしまう。そうしたデータを集めるだけで、今ここに住んでいる人はどれぐらいの資産持っているか、どういう売買をしてきたかがわかるわけです。それとLinkedIn(リンクトイン)やFacebook(フェイスブック)に掲載しているような経歴情報を組み合わせるとどうなるか。その瞬間に、銀行の審査部よりもよっぽどリッチな情報が得られる。インターネットに転がっているわけですよ、しかもタダです。

もっと言えば、アマゾンが僕の購買履歴20年分を分析すれば、いったいどれぐらいのものを買っているか、いくらぐらいのものを毎月買えるかがわかる。銀行審査よりはるかに精緻なプロファイルを取れる。今のフィンテックブームは、ここに目を付けているわけです。仕事が脅かされるような産業はいっぱいある。

人間は、必ず機械を上回る価値を生み出すので、簡単に産業がなくなることはない。ただし大きく変わる。自動車メーカーも、ガソリン車を売っているだけで成り立つと考えている経営者がいたら、それはまずい。みな変化を見据えて新しい取り組みをしないと、アップルやグーグルに根こそぎやられてしまうかもしれない。

次ページこれからは新しい取り組みをしなければ……
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