「世界大戦リスク」がこうも高まってきた背景事情 どの国境、どこの地域が舞台でもおかしくない

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そして東アジア、なかでも台湾をめぐって紛争が起きる可能性は、ウクライナよりも高い。それは米中という世界の二大国家が直接対決する戦争に発展し、ほかの強国もたちまち引きずりこまれて、最後は核兵器が使用されることになる。まさに「第3次世界大戦」と呼ぶにふさわしい紛争になるだろう。

なぜ台湾はリスクが高いのか

2021年から2022年にかけて、台湾とウクライナのリスクの差を鮮明にしたのは米国のジョー・バイデン大統領だった。ロシアと戦うことが「第3次世界大戦の始まりになる」といって、米軍あるいはNATO軍をウクライナに派遣する可能性を慎重に排除したのだ。しかし2021年10月と2022年5月には、もし中国が力で台湾の支配を試みるならば、米軍は直接介入して阻止すると表明した。2022年にも同様の発言を二度繰りかえしている。

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ホワイトハウスと国務省はそのたびに、1972年の米中共同声明での台湾の扱い、すなわ「ひとつの中国」とする政策に変わりはないと「釈明」に追われた。米国は台湾の帰属を力で決定することには反対しつつも、台湾はどうあるべきかの判断はあえて避けてきた。

バイデン発言は、少なくとも自分が大統領であるあいだは、武力行使に軍事介入で対抗するという明確な意思表示だ。欧州では、ロシアと戦闘状態になって「第3次世界大戦を始める」つもりはない。けれどもアジアでは、台湾をめぐって中国と衝突し、第3次世界大戦を始めるつもりがあるということである。

同じ発言を4度も繰りかえしたバイデン大統領は、台湾の立場について「戦略的あいまいさ」を保ってきた米国の方針を、「戦略的明確さ」に切りかえようとしている。米国の鮮明な態度が、台湾独立の刺激になることも恐れていない。こうでもしておかないと、中国の台湾侵攻の恐怖が現実になるかもしれないのだ。

この姿勢に偽りがなく、その後の大統領も踏襲するとしたら、もう空母を派遣するどころの話ではなくなる。1996年、台湾をめぐって米中関係が緊張したとき、当時のビル・クリントン大統領は台湾海峡に空母を二隻派遣して中国に警告した。だがこれからは、世界最大の軍事力を誇る国と、世界第2位の軍事力を持つ国が、全面戦争に突入する事態も起こりうる。米国は1945年に広島と長崎に原子爆弾を投下して以来、初めて核兵器を使用する事態も想定しているだろう。

ビル・エモット 英『エコノミスト』元編集長

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Bill Emmott

英国のジャーナリスト。エコノミスト時代に東京支局長を務め、知日派としても知られる。著作に『「西洋」の終わり』など。

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