天使と悪魔 秦剛平著
中世の宗教画を中心にした200点が詳細に解説されるのだが、宗教界の堕落を反映して司教や司祭に厳しい絵が多いのが目につく。天使の起源、悪魔の来歴、悪魔の誘惑と聖人、死神、煉獄と地獄、天国とイェルサレムの6講から成る講義録だが、辛口のジョーク、皮肉、揶揄にあふれていて非常に読みやすい。ユダヤ・キリスト教研究の第一人者である著者の態度は一貫してシニカルで、「神学というのは荒唐無稽なことを想像する虚学の一つ」など、そこまで言って大丈夫かと随所で心配になる。
多様な絵画の意図を理解し聖書をめぐる事実や教義、歴史、その深層を知ることは宗教からの距離とは関係なく極めて重要であるだろう。魂の重さを量るミカエルの天秤についての記述、七つの大罪の話、裏切りペトロやユダの見方、天国と地獄にまつわる矛盾の指摘など、興味をそそられる話題が次々に登場して楽しい。図版がカラーならさらに楽しめただろう。(純)
青土社 2520円
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