時代劇でお馴染み"お奉行さま"の「破格の年収」 一方では「自炊が基本」で暮らす下級武士たちも

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3人だと約5.4石。現在の価格にすると約162万円だが、家来の食事にも充てるので、すべて換金できたわけではない。

家族や家来を養い、その他、行事や仕事での出費もかさむため、武士は内職も余儀なくされた。傘張り、提灯作りから、金魚やコオロギ、鈴虫などを飼育し売り出すなど、さまざまな内職をし、家計の足しにしていた。

(出所:『新版 江戸の家計簿』より)

自炊が基本だった「単身赴任」の下級武士

人口100万人超の大都市・江戸は、その約半数が武士階級の人間たちで、その多くが江戸勤番として地方からやってきた武士だった。

新版 江戸の家計簿
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そうした地方武士の江戸暮らしの実際を今日に伝えるのが、紀州藩士・酒井伴四郎の記した日記である。

禄高25石の下級武士であった伴四郎は、故郷・和歌山に妻子と両親を残して約1年7カ月にわたって江戸勤番を務めた。現代で言えば、単身赴任のサラリーマンといったところだろうか。

単身赴任の男性となると外食が常と考えがちだが、勤番侍が屋敷の外を出歩くのを、藩側は快くは思っていなかったため、基本は同僚の藩士と共同生活を送る長屋で、自炊をするのが日常だった。

朝に米を炊き味噌汁と一緒に食べ、昼はだいたい冷や飯で済ませるか、おかずに野菜、魚などを添えた。夕食は冷や飯を茶漬けにして香の物を添える程度である。

特に伴四郎が好んだのは、豆腐だったようだ。そのまま冷奴で食べたり、温めて湯豆腐で食べたり、串に刺して焼いた焼き豆腐なども買ったりしている。

磯田 道史 歴史学者

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いそだ みちふみ / Michihumi Isoda

1970年、岡山県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(史学)。茨城大学准教授を経て、2012年4月より静岡文化芸術大学准教授、2014年4月より同教授、2016年4月より国際日本文化研究センター准教授、2021年4月より同教授。著書に『天災から日本史を読みなおす』『歴史の愉しみ方』『日本史を暴く』(中央公論新社)、『武士の家計簿』『殿様の通信簿』『日本人の叡智』(すべて新潮社)、『江戸の備忘録』『龍馬史』『無私の日本人』『徳川家康 弱者の戦略』『磯田道史と日本史を語ろう』(すべて文藝春秋)、『歴史とは靴である』(講談社)、『歴史の読み解き方』(朝日新聞出版)など多数。

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