娯楽施設からソニーまで、相次ぐ震災失業の実態、深刻化する解雇・雇い止め

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 「職場の責任者から、正社員になれると言われて頑張ってきた。身分は期間社員だが、新卒や配置転換で赴任してきた正社員に仕事のやり方を教えてきた」と、本誌の取材に応じた期間社員は、口々に語った。

奥山大輝さん(29)もその一人だ。奥山さんは、勤務中に大地震に見舞われ、翌日午後に冷たい海水をかき分けて自宅に戻った。数日後には、「復旧作業があるから来てほしい」との連絡を受け、避難先にしていた妻の実家から4時間もかけて仙台TECに通った。そして、泥だらけになって復旧作業に汗を流した。

ところが、4月4日に自宅待機を命じるメールが送られてきた。そして5月25日、面談で雇い止めの通告を受けた。しかし、奥山さんは契約書にサインしなかった。

ソニーの古寺猛生・人事部門長は本誌の取材に、「誠意を持って団体交渉に応じている。最長9カ月の再就職支援や求人先探しなど、最大限の努力をしている」と語った。「期間社員の皆さんが製造ラインの立ち上げに尽力したのは事実。ビジネスが従来どおりで震災がなければ正規社員への登用もあったかと思う。しかし、震災で事情が許されなくなった」とも述べた。

「ソニー震災リストラ・雇い止め撤回闘争支援する会」の代表世話人を務める労働法学者の伊藤博義・宮城教育大名誉教授の見方は異なる。

「期間社員は労働契約の反復更新を何度も繰り返し、長い人で12年、最短でも3年10カ月にわたって正社員とともに恒常的、基幹的な業務に従事してきた。このような事実がある場合、期間社員にも雇用の継続を期待する合理性が認められ、解雇の法理が類推適用される。今回の場合は整理解雇の4要件を満たしているかどうかが判断材料になる。期間社員の話から判断すると、4要件はいずれも満たしているとは言えないので、解雇権濫用で無効となる」

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