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ロシア領侵攻でゼレンスキーは「勝ち馬」になれるか プーチン政権と軍部の溝も拡大中

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  • 吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長
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それに比べ、今回は自らの手で完全に準備した作戦だという自負が滲む。アメリカからの横やりを避けて、自分の思い通り作戦を組むという強い思いから、事前に作戦計画をアメリカ政府にはまったく伝えなかった。ゼレンスキー政権の中でもほんの一握りの最高幹部しか知らない完全な秘密作戦だった。

確かに今回も、ウクライナは望んでいるアメリカの軍事支援を全部は受けていない。アメリカが供与した兵器によるロシア領内への攻撃を巡り、地域的制限を全面的に解除するという希望をまだ実現できていないのだ。

ゼレンスキーの4つの狙い

しかし、クルスク州で始めた今回の越境作戦を順調に行うことで、ウクライナ軍は自前での反攻作戦遂行能力を米欧側に誇示したかったのだ。それによって、秋のアメリカ大統領選を前に「勝ち馬(ウクライナ)に乗れ」との機運をワシントンで高め、アメリカから軍事支援をさらに引き出したいとの狙いが浮かび上がってくる。

そんなゼレンスキー氏の必死の思いがこの演説に滲み出ている。

「数カ月前、ウクライナが今のクルスク州での作戦を計画していると知ったら、世界中の多くの人々は、それは不可能だ、と言っただろう」

一方で、今回の越境作戦にはほかにもいくつかの狙いが仕組まれているのが特徴だ。この作戦遂行能力の誇示以外に、越境作戦の背後にあるゼレンスキー大統領の狙いとは何なのか。大きく分けて4つある。

まず1つは、ロシア側との間で将来、何らかの停戦交渉などの外交交渉に向けて、新たな交渉カードを手にすることだ。ウクライナは2024年11月にウクライナが提唱した和平案を協議する「世界平和サミット」の第2回会合開催を準備している。

ゼレンスキー政権としてはこの会合に向けて、「ロシア領に占領地を確保した」との既成事実を背景に「力の立場」で交渉に臨む、という新たな交渉力を得ることを狙っている。ウクライナは、世界平和サミットに向け、今後もクルスク州以外でも何らかの軍事的な既成事実を積み上げたいところだろう。

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