TSMC「アメリカ新工場」まだ稼働していない事情 文化の違いで「台湾式」の移植に大苦戦中

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「台湾でうまくいっているからといって、台湾のやり方をそのまま持ち込めるわけではないということを、私たちはつねに自分たちに言い聞かせている」。TSMCアリゾナ工場で社内広報と従業員関係の責任者を務めるリチャード・リューはそう語った。

最近行った取材では、幹部を含むTSMCの従業員12人が、台湾人管理職とアメリカ人従業員の文化的な衝突が双方の不満につながっていると明かした。TSMCの働き方は過酷なことで知られる。真夜中に緊急の呼び出しがかかることも珍しくない。

フェニックスでは、従業員に期待される働き方をめぐって意見の対立が先鋭化し、何人かのアメリカ人従業員が辞めたという。この件について語った従業員の一部は、公に話す許可を受けていないため、記事では匿名扱いとするよう求めた。

工場の稼働日を延期している同社は現在、アリゾナでの半導体生産を2025年前半に開始する予定だと述べている。

アリゾナの工場計画は政治的脅威に直面する可能性もある。共和党の大統領候補となっている前大統領のドナルド・トランプは6月、『ブルームバーグ・ビジネスウィーク』に対し、台湾が半導体産業をアメリカから奪ったと語った。トランプはTSMCを名指ししなかったが、アメリカで半導体を製造する台湾企業に対しアメリカ政府が資金提供していることを批判した。

日本とドイツでも同様の課題に直面

TSMCは働き方をめぐる文化の違いへの対処に加えて、今後数年で稼働が本格化するアリゾナ工場を動かす熟練技術者の採用活動のギアも上げている。同社は、事業拡大中の日本とドイツでも同様の課題に直面している。

台湾では、TSMCは数万人のエンジニアと、数十年にわたるサプライヤーとの関係を利用できる。しかしアメリカでは、すべてをゼロから構築しなければならない。

「ここ(アリゾナ工場)では、本当にゼロからやらなければならないことがたくさんある」とリューは言う。

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