宅配便ヤマトが"逆張り値下げ"荷物争奪戦が過熱 「2024年問題」に直面するタイミングでなぜ?
SGHDは実質賃金の低下が続いていること、EC需要が旺盛ではないこと、競争激化などを荷物減少の主な要因と分析する。そんな中でも「適正な運賃を収受する」という方針は変えず、単価を落としてまで荷物を獲得することはしなかった。そこにヤマトの攻勢が重なったわけだ。今後は営業活動を再強化する方針だ。
ヤマトの戦略は、数字を見れば明らかだ。4~6月期の宅急便の個数は前年同期比2%増の4億5124万個と健闘したが、単価は706円と同7円下がった。大口法人の取扱数量が6.9%増となり、単価が2.1%下落したことが響いている。
単価の動向について栗栖利蔵副社長は「課題がある」と決算説明会で語った。「新規の大口法人の影響もあり、ミックスで単価は下がった。既存顧客と交渉して単価を上げていく。特に下期はクール便の顧客については単価を上げて収益につなげていく」(栗栖副社長)。
ヤマトは今期の宅急便単価を前期比4円プラスの725円と想定する。法人客の獲得で荷物量を確保しつつ、下期にかけて単価を巻き返せるかが焦点だ。
問われるリーダーの実行力
物流業界は2024年4月に残業の上限規制が導入され、拘束時間や休息時間などの規制も強化される「物流2024年問題」を迎えている。長距離トラックドライバーの待遇改善が中心で、宅配の現場に直接影響するものではない。しかし宅配便大手でも、協力会社に委託している長距離のセンター間の輸送コストなどは着実に上昇する。
委託先に払う運賃が上昇することもあり、各運送会社は2024年問題を機にコストの上昇分を荷主側にしっかりと転嫁し、単価を底上げしていこうというのが業界の機運なのだ。そこで大手のヤマトがむしろ単価を下げて攻勢に出ているのは驚きだ。
もちろん、営業の強化や個数を追う方針自体は責められるものではない。また、現在ヤマトが進める配送網の構造改革の効果によって、早期に値下げ分を回収できる公算があるのかもしれない。
しかし、安値受注で苦しい状況に追い込まれるのは、過当競争に陥った物流業界が数十年間、経験してきたことでもある。
今は運賃や単価の適切な値上げを進め、効率化策も実行し、物流業界全体で待遇や地位を底上げしていく重要な局面だ。ヤマトには業界のリーダーとしての実行力が求められるのではないだろうか。
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