計画と無計画のあいだ 三島邦弘著
本の編集者に求められる能力をご存知だろうか。「受けの力」である。書き手という「言葉の魔術師」「人生の達人」が投げ放つ「魔球」、つまり「すごい話」「誰かに絶対に届けないといけない言葉」を、流してしまえばいいものまで含め、「何かがある」と思ってしまう能力だ。出版社を起こそうとするなら、このセンスが欠かせない。
本書の著者が5年前に単身起こした「自由が丘のほがらかな出版社」は、現在7人の陣容で、書店との直取引、手書きの出版便りといった「原点回帰」の営業スタイルで気を吐く。そのエピソードが数々の「受けの力」とともにつづられる。
「出版社を作ろう!」と思いついた途端、目の前に驚くくらい前日と違う光景が広がって、草木はもちろん、空気さえもキラキラと輝いて目に飛び込んできたと、著者は言う。その喜びを疑似体験するだけではなく、自らも起業したくなる、本好きにはたまらない書籍愛に満ちている。
河出書房新社 1575円
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