『私の実践経済学』はいかにして生まれたか 高橋亀吉著
没後34年、その評価はなお高まっている。『日本近代経済発達史』『日本近代経済形成史』『財界変動史』という金字塔だけでなく、在野のエコノミストとしての足跡が多くの示唆を与えてくれるからだ。貧しくて中学へも行けず店員生活から早大予科へたどり着いた青春期から、金解禁論争や戦時下の政府委員としての活躍、戦後高度成長期の経済論争など、高橋経済学とその背景が明らかにされる。
当局や多くの学者たちがなぜ、どんなふうに判断を誤り、亀吉が経済事象をどのように分析してたとえば変化と変態を識別したか、そのためにどのような勉強を重ねたのか、詳細を極める記述は迫力に富む。「街の経済学者」という俗称すなわち蔑称に闘争心をかき立てられ、生計のため手を染めた株式評論で名を成すなど、波乱万丈の自伝的日本経済史。ライバル石橋湛山がほとんど登場しないのも面白い。若田部昌澄氏による簡にして要を得た巻末解説が便利である。(純)
東洋経済新報社 2940円
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