「0.1%」は高すぎた?預金金利めぐる銀行の誤算 貸出金利の引き上げ困難なら収益に下押し圧力
その後、日銀は2008年から利下げに転じ、2013年にはゼロ金利政策を導入。政策金利と預金金利が逆転し、追随率の議論はもはや意味をなさなくなった。13年ぶりとなる「金利ある世界」への突入は、ほこりをかぶっていた追随率という概念の棚卸しでもあった。
日銀は3月にマイナス金利政策を解除し、政策金利の誘導目標を従来のマイナス0.1%からプラス0.1%程度に変更した。
「マイナス金利解除は過去に例がない事態。ネット銀行の台頭も読み切れない」(首都圏の銀行首脳)。預金金利の設定に迷う声も聞かれる中、三菱UFJ銀行や三井住友銀行が先陣を切り、預金金利を従来の0.001%から0.02%に引き上げると発表。翌日以降、他行もなだれを打つように倣った。
日銀が追加利上げによって年内にも政策金利を0.25%まで引き上げると目されるようになる中、各行の意識は預金金利の引き上げ幅へと移った。政策金利が同水準になった2006年7月当時の預金金利は0.1%。過去の実績を踏まえれば、0.1%派に理があるように見える。
0.08%派の言い分
一方、0.08%派は「追随率4割」というセオリーに着目した。追加利上げによる上昇幅は0.15%であり、預金金利の引き上げ幅は0.15%×0.4=0.06%にとどまるからだ。実際、複数の地銀は預金金利の水準を0.02%に0.06%を加えた0.08%と仮定し、追加利上げ時の収益影響を試算していたようだ。
どちらに軍配が上がったかは言をまたない。7月31日に日銀が追加利上げに踏み切ると、メガバンクはそろって預金金利を0.1%に引き上げた。0.08%と見込んでいた東日本の地銀関係者は「われわれだけ0.08%に抑えて、悪目立ちはしたくない」と吐露。この地銀はほどなくして、0.1%への引き上げを表明した。
結局、0.15%の利上げに対して預金金利が0.08%上昇したため、追随率は53%となった。今後、日銀がさらなる利上げに踏み切った際には、預金金利の引き上げ幅をめぐる思惑が再び交錯しそうだ。
兆円単位の預金を抱える銀行にとって、わずか0.02%の差でも数億円の利払い増加につながる。経営を揺るがすほどではないものの、中小金融機関にとっては無視できない負担だ。預金金利の上昇分を今後、貸出金利に転嫁できるかが重要になる。
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