大工激減の一方で、「大工講座」が大人気の事情 副業・兼業大工が増えることの意味とは

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「講座で実際の古民家の改修の様子が見られたのがよかった。今、手を入れているのは30年空き家だった家で大掃除に2カ月かかり、住めるようになるまでにはまだ1~2年かかるかもしれませんが、自分で身体を動かした成果が形になっていくのは楽しく、うれしい。やりがいがあります」(スダさん)と大工作業の魅力を語る。

関西学院大学4年生の菅野佑志さんは、大学の空き家についての講義で西村さんを知り、以前からモノ作りに関心があったことから大工の世界に触れてみたいと参加。そこでモノを作る楽しさ、特にみんなと力を合わせて作業する喜び、達成感に目覚めた。

「身の回りでよく空き家を見かけますが、空き家問題は行政がやるもの、自分には手を出せないと無力感があったのですが、実際に大工作業をしてみて自分にもできる!と発見。勇気づけられました」

空き家から価値、資産を生み出せたら

菅野さんも西村さんから廃屋を譲り受け、友人たちと一緒に数年かけて改修を行い、建物を使えるようにするだけでなく、それによって地域を変えていきたいと考えている。一般に空き家はネガティブな存在として捉えられているが、育成講座を経て手を動かせるようになった彼らにとっては自分たちで変えられる余白に見えているのである。

福島県出身の菅野さんは東日本大震災で被害を受けた郷里を同じやり方で面白くできるのではないかとも考えている。

「空き家のようなマイナスと思われているものから価値、資産を生み出せるなら今は何もなくなったようにみえる福島からも新しい価値を生み出せるのではないかと思うのです」

大工の育成講座と聞くと木の切り方や工具の使い方など実務的な内容をイメージするが、参加した2人はそれ以上に精神的な喜びや学びを得ているように思える。

「講座は午前中に仕事の楽しみ、意義や地域や仲間との協業、仕事をいかに自分事にするかなどといった座学を行い、午後からは手を動かすという形式です」と西村さん。「宮大工をはじめ職人はもちろん、地域の人たちと建物を作るコミュニティ大工、自ら手を動かす建築家等さまざまな方に話をしていただき、大工修行のハードルをどう下げるかを意識しました」。

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事