大工激減の一方で、「大工講座」が大人気の事情 副業・兼業大工が増えることの意味とは
20年かけて減り続けてきた業界に減少数を上回る需要が発生してしまったわけで、人手が足りるはずがない。高齢化が進んでいることから近い将来に人手不足が解消される可能性は極めて低い。
ニーズがあるなら新規参入があるのでは?と思う人もいるだろう。だが、もともと零細企業、個人事業主の多い業界で立場はつねに弱い。給料も含め、働く環境は改善されない状態が長らく続いてきた。このところの建築費高騰でも資材費アップ分は施主に請求するのが一般的だが、人件費はアップされないどころか、逆に抑えようとする事業者もあったほどだ。
全国建設労働組合総連合(全建総連)が参加する建築大工技能者等検討会の調査では、雇用されている社員大工ですら、全体の53%が日給月払制で、雨で休みの日が増えると給料が減るという状況。建設業技能労働者男性平均(465.1万円)は、全産業平均給与(487.3万円)を下回る。
7人の求人に対して、採用できるのは1人
大工はさらに安くて377.7万円。週休1日制が45%を占めるなど休日も少なく、福利厚生などを整備したくても難しいという状況だ。「処遇引き上げ、就労環境の改善は喫緊の課題です」と、大工・左官などの建設業に従事する人たちの組合である、全建総連の技術対策部長・小林正和さんは言う。
国や業界団体も手をこまぬいていたわけではない。例えば、公共工事設計労務単価は年々改定されてきてはいる。だが、それと職人の給料アップがイコールかと言えば実態は極めて疑わしく、年齢、技能の熟練度を考えると相変わらず低賃金に甘んじている例も少なくない。
全建総連でも各地域の加盟組合が認定職業訓練校を運営して、若年技能者の就職と職業訓練をセットにした取り組みを進めているが、そもそも技能者を目指す若者が大幅に減少。従来行ってきた工業高校への声掛けといった訓練生募集などのアプローチだけでは訓練生確保は難しくなっており、1996年以降認定職業訓練校への進学者は減り続けている。
その結果、建設業では7人の求人に対して1人しか採用できておらず、しかも、そのうちの4割が3年以内に辞めるという結果に。製造業でも2人に1人を採用できていることを考えると、いかに若手が参入しない業界になってしまっているかがよくわかる。この減少を食い止めるためには給料を上げる一方で休みが取れるような状況にしていくことが必須なのである。
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