ヤフー社長が「戦後70年企画」に取り組む真意 「戦争の記憶を次世代にきちんと継承したい」

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山田:継続的にやるのであれば、ビジネス的にも成り立つようにスポンサーを集めてやったほうがいいかもしれません。

宮坂:付けてもよかったとは思いますが、今年は仕上げるだけで精一杯でした。来年以降は、例えばですが、企業の中には70年以上やっている会社の戦中の記録などを扱うことを考えていきたい。きっとたくさんの記録が残っていると思うんです。スポンサーを集めるというより、コンテンツ提供でご協力いただく企業を集めるほうがいいかもしれません。

戦争の記録を未来に残すことには、私の個人的な思いもあります。日本は、本当の意味での「国家総力戦」という戦いをやった最後の国じゃないかと思うんです。そして、もう同じようなことを世界のどの国も繰り返してはいけないと思う。そのためにも、原体験をした人の記録を残しておくことは重要です。

ニュートラルな意見を集めたい

山田:記録は書籍の形で残っていることが多く、だからこそ若い人の目に触れなくなっているような気がします。新聞・テレビ全盛期のコンテンツを再度ネットにアーカイブし直す作業が必要なのでしょうね。

宮坂:そこにこそヤフーの役割があると思っています。ヤフーらしいやり方で、社会的な意義のあることに切り込んでいき、価値を提供できるようになりたいと思います。

だからと言って、何かの政治的な主張を伝えたいわけではありません。それはむしろ避けなければいけない。僕は世の中にはニュートラルな声がけっこう多いと思うんです。ところが、ネットはニュートラルな声は話題にならない。風潮的にネットは極端な意見ばかりが集まり、ニュートラルな人が発言しにくくなっている。これはよくないと思っています。

山田:戦後の日本は、ニュートラルで良識的な意見が圧倒的な多数派だったと思います。それがヘタをすると引き継がれずにかき消されてしまうおそれがある。

宮坂:まさにそれが心配なところです。歴史って積み重ねじゃないですか。僕は会社でも言うのですが、「来たときよりも美しく」ということが重要だと思っています。親は子に対して、少しでも、1ミリでも、幸せになってほしいと思うわけです。その積み重ねで今まで来ているわけですよね。その積み重ねの努力、大変さというのを今生きている人は知る義務があると思う。それを知ることによって、自分が頑張る理由にもなるわけです。

今の世代が次の世代のために頑張るのも義務だと思うんです。自分より前の世代の人たちは、果てしなく、何十代さかのぼっても、「せめてこの子には自分よりもいい暮らしを」と考えてきたはずです。それがあって今があるのに、歴史を軽視してはいけません。そして今の世の中をよくしていくには、過去から受け継いできたものを、ちゃんと自分の中に受け止めないと絶対にだめです。要するに、自分だけでこの世の中を生きているわけじゃない、という話です。

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