ヤフー社長が「戦後70年企画」に取り組む真意 「戦争の記憶を次世代にきちんと継承したい」

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宮坂:そうです。インターネット、とくにソーシャルメディアなどは横の同世代に、国境を越えて広がっていきますよね。横に広げていくことはやっていきたい。

ただ、今回は縦にもつないでいけるようにしたい。4世代をつなぐとか10世代つなぐとか。むしろネットは、紙よりもそれをやりやすいんじゃないかと思います。まだネットができて1世代も経ってないのに生意気ですけれども。

山田:お年寄りから子どもまでを繋ぐ、と。

宮坂:これはインターネットの得意分野かもしれない。3.11のときに特設サイトを作った際にも、それは感じました。ですからこうしたプロジェクトはいろいろとやっていきたい。

山田:新興のスマホ向けサービスと比べれば、ヤフーの場合は高齢者にも使っています。そういう意味では、世代間を繋ぎやすいですね。

宮坂:ITリテラシーが低いと言われている人も含めて、ヤフーを使ってくださっている。その点については、われわれも自覚しています。ITは進化が速いので、ヘタをするとそういう人を見捨てることにもなりかねない。ですから、そういう人も含めてメッセージを集めて記憶を保存していく仕事は、ヤフーがやるべきだという思いもありました。

これはオリジナルコンテンツでもある

山田:ビジネス視点だけで考えると、トップページの大事な場所にリンクを置くことに抵抗感を持つ人もいるのでは?

宮坂:なかなか売り上げ計画を作れないので現場はやりにくいと思います。最初はあまり乗り気ではなかったけれども、途中からみんなやる気になった感じですね。

山田:一方で、これは非常に強いコンテンツという言い方もできる。ヤフーは長らく最強のネットメディアですが、オリジナルコンテンツについては弱かった。一部ではオリジナルのニュース記事を作り始めていますが、ニュースを扱うよりも、アーカイブ型のコンテンツを蓄えていく今回のやり方は賢い戦略のようにみえます。

宮坂:たしかにヤフーにとってオリジナルコンテンツを強化することは課題です。ただし、みんなと同じことをやってしまえば既存の情報提供元とコンピート(競合)してしまう。そうならないように、自分たちにしかできないことをやっていきたい。今回の企画もヤフーらしい企画ですし、オリジナルってこういうことだと思います。

山田:社会的意義があることなので、既存メディアもなかなか反発しにくい。むしろ、既存メディアの取り組みが不足しているようにも感じているのでは?

宮坂:いや戦後50年という節目、1995年にかなり皆さんやられている。地方のテレビ局などには多くの証言ビデオが残っているそうです。1995年にはヤフーはまだなかったですから、そうしたアーカイブも見られるようにしていければ、と思います。

1995年だけでなく、1980年代から1990年代ぐらいにかけて、大手メディアは証言を集める作業をかなりやっていたと聞いています。そういうものを未来にちゃんと伝えていきたいと考えています。

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