ヤフー社長が「戦後70年企画」に取り組む真意 「戦争の記憶を次世代にきちんと継承したい」

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山田:強い思いでやっていることが分かりました。ところでこのプロジェクトを初めてから、お墓にはまっているとか。

宮坂:そうですね。寺とか墓のマニアになっています。なんだかお墓を見かけると、そこに吸い寄せられちゃうんですね。墓地をみますと戦死者の墓が結構あるわけです。最近それを見るのが、コレクターとまでは言いませんが、好きになっちゃいまして。よくお墓を見ています。

そして考えさせられることが多いです。いつ亡くなったのかをみると年齢が自分よりもずっと若い人がたくさんいますよね。それを目の当たりにすると、本当に頑張らないといけないな、と思います。

山田:そういう大きな話と比較すれば、ヤフーの連続増益記録を維持していく、といった経営の話は小さく思えてくるのでは?

宮坂:そうですね・・・って言ったら怒られちゃいますから、そうは言いませんけれども(笑)。

ボトムを引き上げる仕事をしていきたい

宮坂学(みやさか まなぶ)1967年山口県生まれ。91年同志社大学経済学部卒業。ユー・ピー・ユーを経て、1997年創業2年目のヤフーに入社。メディア事業部長、執行役員コンシューマ事業統括本部長を経て、2012年4月にCEO、同年6月に社長就任。2013年よりソフトバンク取締役も兼務。

山田:ヤフーは新しい分野を切り開くようなイノベーションは苦手なように見えます。今後、先端を突き進むよりも活動の領域を拡げることで成長を続けていく戦略でしょうか。

宮坂:イノベーションをどんどん起こして、前にぐいぐい行こうっていうのもやらないといけないと思います。ご指摘の通り、ヤフーはそこのところが弱くなっているので。

その一方で、世の中全体のバージョンアップ、アップデートということに関与していきたい。世の中が良くなるということは、ピラミッドのボトムがどれだけ上がるかだと思うんです。上がいくら伸びたって、下が低いとダメ。日本がIT大国になるためには、ITが使えない人を手助けして使えるようにしなければいけない。そういう思いがあるんです。行列の一番後ろにいる人たちをちゃんとエンパワーすることが必要です。

たとえば今、日本でもっとも大変なのは3.11の被災地エリアです。そこでインターネットがお役に立てない限り、インターネットがいくら経済を活性化しています、と主張したところで一部の限られた話になってしまう。一番大変な人、一番歩みの遅いところ、一番苦労されてるところこそ、ヤフーがトライする場所です。

これは社会貢献ではありません。一番難しいところでやれれば、ほかのところではもっと楽にできる。ビジネスとして考えても、絶対にやっていいくべきことだと考えています。

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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