高速道路 なぜ料金を払うのか 高速道路問題を正しく理解する 宮川公男著 ~問題の本質を論じ誤った政策の修正を促す
高速道路料金の原則無料化は、政権交代における民主党マニフェストの目玉の一つであった。しかし、東日本大震災の復興費の財源として、高速道路無料化の社会実験は停止された。社会的に見て優先順位は決して高くなかったのだから、停止されたのは当然だろう。しかし、政権交代直前には、焦った自民党政権が民主党をまねて「休日千円」策を導入した。料金引き下げによる道路混雑で迷惑した人は少なくなかったが、なぜこのような愚策が繰り返されるのか。本書を読めば、近年の高速道路問題の本質が見えてくる。
民主党が原則無料化を掲げた背景には、日本の高速道路料金が突出して高いことにある。地方に行けば道路はガラガラで、無料化すればもっと有効に利用されると考えたのだろう。
著者はそもそも高速道路建設における「将来の無料開放の原則」と「償還主義」の二つが問題だと断じる。日本では全国の高速道路網が完成し、建設費用が料金で償還された段階で、すべて無料化するという方針を掲げてきた。しかし、償還が終わっても無料化する必要はあるのか。有期で償還を行おうとするから、現在の料金が割高になるのであり、恒久有料化とすれば料金を引き下げることができる。そもそも高速料金は高速移動の対価であり、無料化して混雑が生じれば高速移動サービスそのものが提供できなくなる。
地方の高速道路がガラガラなのは、ニーズの少ない道路を作ったことが原因だが、全国画一料率制を続けていることも大きく影響している。利用者の便益の高い路線の料率を引き上げ、便益の低い路線の料率を引き下げる工夫が必要である。