中国は冬季五輪でもネット規制をやめない 過去の経緯で読み解く「本音と建て前」

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これらを振り返るに「2022年のインターネットは開放する」といったところで、それは中国のその時々のルール下において、さまざまな規制がしかれていたとしても「十分インターネットは自由である」という中国政府的の独自解釈を展開するのではないだろうか。つまり、堂々と2008年の北京五輪時のように、治安安定のため規制を強化するのではないか。

一連の発言とは別に、インターネット規制の解除の事実についても押えておきたい。

やはりネット解放は「限定的」の可能性大

中国において、比較的広い地域でインターネット規制が解除されたことは今まで一度もない。たとえば2011年には重慶で規制を解除したクラウド特区ができるという話が出たが。立ち消えとなっている。上海を皮切りとした自由貿易区でもインターネット規制の解除が期待されたが、実現されていない。

一方で2014年11月の北京でのAPEC会場、および中国が開催したインターネットについての会議「世界互聯網(インターネット)大会」の会場においてFacebookやYouTubeが使える“開放”を行った。つまり会場レベルでは、限定された参加者に対して、どんなサイトにもアクセスできる自由なインターネットを提供している実績がある。

だがオリンピック会場というと、複数の広い会場で、中国国内外を問わず一般人が参加する。国体の安定を第一に特殊なインターネット環境を一貫して構築する中国が、オリンピック期間中に中国の民間人に対して開放するとは考えづらい。規制なきインターネットが誰でも使えるようになれば、“中国政府憎し”で揚げ足取りをしたい中国人が、開放されたインターネットを使って、中国政府に対して嫌がらせのような行動を取るに違いない。

とすると、冬季五輪会場では選ばれた報道陣やVIPなど、限られた外国人に対してだけ、プレスルームなど場所を限定して開放するというのが、ごくごく自然に想像できるストーリーだ。一般人は外国人も含め、中国の限られたサイトにしかアクセスできない中、ごく一部の施設をAPECのときのように開放することで「公言通り2008年よりもネットを開放した」と言い、成功をアピールするだろう。

山谷 剛史 フリーライター

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やまや たけし / Takeshi Yamaya

1976年東京都生まれ。理工系学科卒、前職SE。海外専門ITジャーナリストだが、特殊な中国IT事情が面白く、中国についてよく執筆する。
中国雲南省と福岡を拠点とし、中国各地や東南アジア、南アジアまで都市部、郊外問わず足を使ってミクロ経済の現場を調査。
著書に「日本人が知らない中国インターネット市場」(インプレスR&D)「新しい中国人 ネットで団結する若者たち」(ソフトバンククリエイティブ)。
連載に「山谷剛史のアジアン・アイティー」「山谷剛史のマンスリーチャイナネット事件簿」「山谷剛史のアジアIT小話」など。
講演、テレビ、ラジオ出演も。

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