6月29日、アジアインフラ投資銀行(AIIB)設立協定の署名式が北京で行なわれた。創設メンバーとして参加を表明した57カ国のうち、フィリピンなど7カ国は署名せず、銀行が運営を開始する年末までに対応を決めるそうだ。
日本は米国とともに参加しなかった。厳密にいえば、参加しないということを決定したのではなく、今後の推移を見守るというのが政府の姿勢である。この構想が打ち出された当初、国内では乗り遅れるなという論調が強かったが、今はかなり沈静化したように見受けられる。しかし、参加しないことに自信を持てる人も少ない。要するに、日本としてはどうするのがよいのかよく分からないというのが大勢だが、私は、やはり日本として参加すべきでないと思う。
AIIBを観察する側の問題点
AIIBの問題点を説明する前に、AIIBを観察する側の問題点を一言述べておきたい。AIIBは「銀行」なので、政府でも、またメディアでも金融や経済の専門家に振る、つまり担当させる傾向があるが、それは適切でない。なぜならば、この銀行は、きわめて政治的であり、銀行としての信頼性、ガバナビリティなどを論じる以前の問題があり、それを明確にしておかないと正しい判断ができないからである。
AIIBの最大の問題は中国だけがダントツに大きな権限を持っていることだ。出資比率は中国が30.34%であり、2位のインド(8%台)、3位のロシア(6%台)を大きく引き離している。各国の議決権は出資比率に基づいて算出され、中国が26%を確保している。同銀行において重要事項を決定するには75%の賛成が必要なので、中国がノーと言えば他の国がすべて賛成しても成立しない。つまり、中国だけが拒否権を持つということなのだ。
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