プロから見ればAIIBは国際機関ではない アジアインフラ銀行は中国の国内銀行だ

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AIIBの本部は北京に置かれる。国際機関であれば、本部の所在地は関係国がすべて参加する協議において決定される。しかし、AIIBの所在地は中国が影響力を行使しやすい諸国との間で決定済みであり(2014年10月24日、北京で署名された創設に関する覚書)、後から参加した国は「創設メンバー国」としての地位を与えられるが、本部を北京とすることについては、その決定を呑むか、それが嫌なら銀行の設立に参加しないという選択肢しかなかった。AIIB設立協定に署名した50の「創設メンバー国」のうち、本部決定の協議に参加できたのはその半数にも満たなかったということである。

また、総裁も中国人となるだろう。中国の圧倒的な決定権から見て当然であり、中国ではすでに具体的な候補者名が挙がっている。

AIIBは国際機関とは呼べない

このようなAIIBは国際機関と呼べない。世界は平等な主権国家から成立している。各国が協力して国際機関を設立する場合、決定権は普遍性のあるルールにしたがって振り分けられ、本部や総裁は全参加国の協議で決定されなければならない。AIIBの実体は中国の国内銀行に近い。

折しも、AIIB設立協定の署名直後の7月7日、中国、ロシア、インド、ブラジルおよび南アフリカの5カ国が設立した「BRICS開発銀行」の第1回総会がモスクワで開かれ、発足した。

両銀行共にインフラ建設などに資金を提供する開発銀行であるが、対象地域がAIIBはアジア、BRICSにはそのような限定はないという以上の違いがある。

BRICS開発銀行は5カ国が均等に出資する。本部は上海に置かれているが、初代の総裁はインドのクンダプール・ワマン・カマス氏であり、最初の総会がモスクワで開かれたことを見ても5カ国のバランスに注意が払われている。

実は、設立の準備過程では中国はやはり他の国より多く出資したいと要望し、具体的な出資額まで提示していた。しかし、他の国は中国だけの影響力が強くなるのを嫌い、結局5カ国平等の出資比率にした経緯がある。

中国はこれでは不満だったのだろう。BRICSの轍を踏まないよう、AIIBでは中国の出資比率が自然にダントツになるよう初めから周到に計画を進めた。中国のGDPは世界の12.7%(2013年)であり、これでは中国だけが拒否権を持つことにならない。そこで、規模が小さく中国の主張を聞いてくれやすい20の国だけで設立の青写真を決定し(前記の本部を北京と決定した覚書署名式で)、「アジア諸国の出資が全体の70%以上」という枠組みを設定してしまった(一時期75%にしようとしたとも報道された)。こうすると自然に中国だけが拒否権を獲得することになる。

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