対話の現場/ふまじめのすすめ新しい対話的発想法

これは文化の違いについても同じことである。

日本人であれば、自分の中核に日本文化があって、言動の端々に日本文化がにじみ出してくるように考えがちである。だが、対話論においては、自分の属する文化についても、立場や年齢と同じく、自分の「属性」の一つと考えるのだ。

この属性を戦略的に使えるかどうか。たとえば、日本文化に特有の行動を意識的に表示すれば、自分が日本人であることを強烈にアピールできる。逆に、そういった行動を意識的に避ければ、「日本文化に属さない日本人」という独特のスタンスを示すことができるのだ。

日本文化をもって自分のアイデンティティとしている人は、それを戦略的に利用するなど、とんでもないことと思うかもしれない。だが、厳しい対話においては、あらゆる属性を戦略的に利用しなければならないことがある。また、「自分が日本文化に属するかどうかなんて、どうでもいいじゃないか」と投げ出すことは、自分自身を客観的に見つめ直す契機にもなるのだ。

最近、先行きに対する不安感からか、「日本の心」を強調する風潮が目立つ。それはそれでよいことだと思う。だが、その信念でまじめに突っ走る前に、すべてを投げ出して考えてみることをお勧めしたい。


北川達夫(きたがわ・たつお) 
日本教育大学院大学客員教授■1966年生まれ。早大法学部卒、外務省入省。在フィンランド大使館に8年間勤務し退官。英、仏、中国、フィンランド、スウェーデン、エストニア語に堪能。日本やフィンランドなど各国の教科書制作に携わる。近著は『不都合な相手と話す技術』(小社刊)。(写真:吉野純治)


(週刊東洋経済2011年10月22日号)
※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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